ひとつのバス事業者を掘り下げて紹介する、バス会社潜入レポート。今回は2017年に遡って、11月発売号で掲載した三重交通編を振り返って紹介する。 路線バス・高速バス・貸切バスを積極的に運行する三重交通は2014年に創立70周年を迎えた。路線バスは三重県内全域で運行し、高速便では名古屋とも直結するなど幅広い路線が自慢だ。幅広く路線を展開する三重交通を細かく紹介していく。
(記事の内容は、2017年11月現在のものです)
構成・執筆・写真/湯(バスマガ信越支局)※特記を除く
※2017年11月発売《バスマガジンvol.86》『おじゃまします! バス会社潜入レポート』より
(三重交通特集 その1)
■三重県全域に路線を展開
三重県は面積の割に縦に長い。南北に180kmもあり、気候も文化も地域により異なる。県内の道路事情は主に北中部と南部で大きく異なっている。北中部のうち久居以北は早くから高速道路が通っていたが、久居以南は90年代以降に整備されており、紀勢道は現在も延伸の途上。今まさに交通事情の転換点を迎えている。
例外としては、伊勢神宮へのアクセス道路として国道23号線が早くから整備されており、1975年供用開始の南勢バイパスは現在でも主要ルートである。
三重県には新幹線駅と旅客空港の両方が存在しない。これは47都道府県の中で奈良県・山梨県・三重県の3県のみである。リニア中央新幹線(東京―大阪間)はこの3県全てを通り、3県の交通全体への大きなインパクトになるのは間違いないだろう。
地域差の大きい三重県の全域に路線を展開する三重交通は、県下29市町のうち、14市全てに路線バスを運行中。
15町のうち14町にはコミュニティバスや南紀特急バスを含めたバス停が存在しており、残り1町も隣接市のコミュニティバスの運行経路に入っている(但しバス停は無し)ため、三重県内の全29市町で三重交通の運行する車両が見られる事になる。
一部は愛知県や奈良県、和歌山県に足を延ばす他、愛知県内のみで完結する路線が存在する。特殊な例として、観梅時期のみの運行ではあるが、京都府と奈良県のみで完結する季節運行路線もある。
三重交通が発足したのは1944年。戦時下に北勢電気鉄道、三重鉄道、三重乗合自動車、松阪電気鉄道、志摩電気鉄道、伊賀自動車の6社が合併して誕生、商号を三重交通とした。
本誌では、第34号(2009年3月発行)の事業者訪問に取り上げており、今回はその後の動きを中心に紹介したい。
前述の通り、いま三重県は高速道路延伸の真っ最中であり、2008年2月に新名神高速道路(亀山JCT~草津田上IC間)が開通、2016年8月には同高速の四日市JCT~新四日市JCT間が開通し、同時開業の東海環状道東員ICまで供用開始した。
これまで名古屋・首都圏方面がメインであった県外高速バスは、新名神の開通により現在は京都・大阪方面が5路線となっている。
紀勢道など南紀方面は漸次延伸を続けている。2015年3月に尾鷲北ICまで高速道路のみで行く事が出来るようになった。
国道42号熊野尾鷲道路(I期)は尾鷲南IC~三木里IC間が2008年4月に開通、三木里IC~熊野大泊IC間が2013年9月に開通し、高速バスの所要時間が短縮された他、全国有数の降水量を記録するエリアにあって、雨量規制の影響の軽減が期待される。現在、II期の尾鷲北IC~尾鷲南IC(供用時期未定)が事業中である。
路線バスについては各地に分車庫を持つことが三重交通の特徴。山奥であっても朝晩に営業所から長距離の回送を必要とせず、県内全域で路線を持ち通勤通学需要に応えられる理由の一つである。
以前三重交通が運行していた不採算の地域路線は自治体のコミュニティバスとして引き継がれる事も多く、その結果、コミュニティバスも数多く担当している。
貸切バスは路線バス営業所に併設されている。車両の更新は順調に進んでおり、アッパークラス車両を打ち出したパックツアーも積極的に組まれている。なお、以前は子会社だった三交旅行(三交パルック)を2012年4月に合併して自社の旅行部門化としている。
この他、県内に大手メーカーの大規模工場が多い事から朝晩の契約輸送も重要な事業のひとつになっている。
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