ぜいたく品と見られていた時代も遥か昔の話となり、今や生活必需品となったエアコン。建物だけでなく、移動に使われる乗り物にも、なくてはならない存在だ。
普段何気なく利用している路線バスにも当然、エアコンは当たり前のように搭載されているが、このバス用のエアコン(クーラー)には、建物用エアコンの性能に置き換えると、どのくらいの冷やす能力があるのだろうか?
文:中山修一
写真:中山修一/バスマガジン編集部
強力以上の“超”強力!?
ひと口にバス用エアコンと言っても、車両のサイズや定員など、使用する条件に応じて冷やす力・冷房能力の異なるモデルが用意されている。冷房能力は「kW(キロワット)」で表すことができ、街中で走っている定員約60名の中型路線バスに搭載されているエアコンには、大体の目安で15〜20kWほどの冷房能力がある。
一般家庭向けの8畳用エアコンの冷房能力が2.2kWくらいであるのに対して、ずいぶんパワーのある印象だ。20kWクラスの建物エアコンとなると業務用でも比較的強力なタイプになり、業務用エアコンで言うところの「8馬力」クラスに迫る。
バス向けと建物向けのエアコンは性質が全く異なるため、あくまで単純計算で予想しただけの話に留まるが、冷房能力が20kWだった場合、150平方メートル程度の広さを冷やせるとされ、これを団地間の畳サイズに直すと、何と約104畳分!
中型路線バスの車内を部屋の広さにざっくり直すと13畳間相当になるので、オーバースペックとも取れる予想外の数値、バスエアコンは強力以上の超強力であるのがイメージできる。
そんなにパワーがいるの? いるんですっ!!
感覚的には100畳間を冷やせてしまうほどのバスエアコン、果たしてそこまで力が必要なものだろうか。エンジンを掛けていない自動車に乗ったら、冬場でも車内がサウナのようになっていた経験をしたことが多々あるかと思う。
これはバス車両も同じことで、住宅のような断熱性はほとんどなく、常に外からの熱に晒されるため、放っておけば車内はどんどん暑くなってしまう。さらに、大勢の乗客を乗せて走るバスでは、乗車中の人から発せられる熱も車内温度が上がる要因の一つに数えられる。
こういった要因を打ち消して、なおかつ涼しいと感じる状態まで車内温度を下げて維持するためには、それなりのパワーが求められる、というわけだ。
また、バス用エアコンは車両に積まれているバッテリーで動くようになっている。重量は冷房能力によって30〜170kg程度までと幅が広く、電圧24V/消費電流35〜50Aくらいの範囲が標準だ。メーカー国内シェアでは、デンソーエアクール社製品が大多数を占めると言われる。
ここ数年はコロナの影響で、車内の換気が重要なポイントとなっているが、バスには強力な換気機能が付いており、3〜5分ほどで車内の全ての空気が入れ替わる。
四季を通じて快適な車内環境を提供して走り続ける路線バス。乗客が快適に過ごすために、ハイパワーなエアコンの活躍は欠かせない。バスに乗ったら、たまには天井を見上げてエアコンにご挨拶してみよう!!
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