乗るたび「長っ!」って思ったあの頃…… バスのシフトレバーのヒミツ

乗るたび「長っ!」って思ったあの頃…… バスのシフトレバーのヒミツ

 ごく貴重な存在となって久しいながらも、昔はバスに乗ると運転席の長いシフトレバーに目が行ったものだ。バスのシフトレバーはどうしてあんなに長かったのだろうか? 過去から現在まで、シフトレバーと変速機構の移り変わりを簡単に追ってみよう。

文:中山修一
写真:バスマガジン編集部

【画像ギャラリー】種類多すぎ!! いまどきのバスのトランスミッションとシフト機器(7枚)画像ギャラリー

長くないとダメだった?

 昔のバスによく使われていた、すごく長いシフトレバー。「棒シフト」や「ロッドシフト」のような通称がある。箱型バスの多くが後ろにエンジンを積んでおり、変速装置もまた後部に付いていることに事情がありそうだ。

 棒シフトのバスでは、シフトレバーから変速装置までを、車体長いっぱいに迫るほどの長いジョイントで繋げて、入力〜ギヤの切り替え全てのプロセスを物理的に(人力で)行う構造が一般的だった。

 そのような構造の場合、ギヤチェンジをするには非常に大きな力が必要となるが、シフトレバーを長くすればテコの原理が働き、片腕の力だけで操作できるようになる、というわけだ。
 その他、シフトレバーが長かった理由に…

・レバーを長くしないと手が届かない
・構造が比較的シンプルでコストが抑えられる
・ボディなどの架装がしやすい
・変速時の微妙な位置決めがしやすい

……などが挙げられる。バスのドライビングポジションを考えると、単純に「手が届かない」のが一番の理由かもしれない。

1990年式UD+富士ボディ6Eの運転席。床から長いシフトレバーが伸びている
1990年式UD+富士ボディ6Eの運転席。床から長いシフトレバーが伸びている

人力から電気へ

 バスを象徴するパーツの一つであった長いシフトレバーであるが、1980年代になると、短いシフトレバーの付いたバスが登場し始める。「フィンガーシフト」と呼ばれる変速方式で、三菱ふそうが1983年11月にリリースした路線車に初めて搭載された。

 フィンガーシフトとは、シフトレバーと変速装置を直接繋げるのではなく、運転席のシフトレバーの部分を電気スイッチに置き換えて、途中の変速プロセスを電気的に処理するものだ。
 棒シフトと仕組みを比較した場合…

【棒シフト】
シフトレバー → 機械式ジョイント → 変速装置

【フィンガーシフト】
シフトレバー → 電気ケーブル → 電子制御装置 → 変速装置
……ざっくりとではあるが、上記のような違いがある。

 例えばシフトレバーを2速にセットした場合「2速」の電気信号が後部の電子制御装置に送られ、受けた信号に応じて自動的に空気圧または油圧で実際のギヤチェンジを行う。

 シフトレバーはタダのスイッチであるため、その名の通り指の力だけでギヤチェンジを行えるのが、フィンガーシフトの特徴で最大のメリットとなっている。

 フィンガーシフトを搭載したバス車両がマニュアル車であるのは棒シフトと変わらず、ちゃんとクラッチは付いている。

大型2階建バス・三菱ふそうエアロキングのフィンガーシフトMT
大型2階建バス・三菱ふそうエアロキングのフィンガーシフトMT

次ページは : バスもいまではMTは希少になった?

最新号

【9月20日発売】巻頭特集は「東急バス」!! ほか楽しいバスの企画満載の バスマガジン126号!!

【9月20日発売】巻頭特集は「東急バス」!! ほか楽しいバスの企画満載の バスマガジン126号!!

バスマガジン Vol.126は9月20日発売!! 美しい写真と詳細なデータ、大胆な企画と緻密な取材で読者を魅了してやまないバス好きのためのバス総合情報誌だ!!  巻頭の[おじゃまします! バス会社潜入レポート]では、東急バスを特集。東京都から神奈川県において都市部から住宅地、田園地帯まで広いエリアを綿密なネットワークを展開、さらに高速路線バスやエアポートリムジンも大活躍。地域住民の足としてはもちろん、首都圏の動脈ともいえる重要な存在だ。  続く特集は、ついに日本に上陸しさらに種子島での運行が決まった、ヒョンデの電気バス[ELEC CITY TOWN]の試乗インプレッション。日本におけるヒョンデの本拠地である横浜・みなとみらい地区で、徹底的にその性能を確認した。  バスの周辺パーツやシステムを紹介する[バス用品探訪]では、なんと排出ガスからほぼ煤が出なくなるというエンジンオイルを紹介。この画期的な商品「出光アッシュフリー」について、出光で話わ聞いてきた。  そして後半カラー特集では、本誌で毎号、その動向、性能を追跡取材してきた「カルサンe-JEST」。このトルコ製小型電気バスがついに、運行デビューを果たした。その地は長野県伊那市と栃木県那須塩原市。今後の活躍が期待される出発式を紹介する。