■「ブッキングカーブ」に注目
高速バスのように、リードタイム(何日前に予約するか)とバジェット(いくらまで払う気があるか)との間に明確な相関がない市場では、早割や段階的値上げは有効とは言えない。これは、国内のホテルやLCCなどでも共通だ。
筆者は、各事業者のダイナミック・プライシング導入後の分析作業を行っているが、「予約が伸びるにつれシステムが自動的に値上げしてくれるから」と、販売開始時(1ヶ月前)時点の運賃額を低めに設定する事業者が見受けられる。
結果として、大型連休など最繁忙日の客単価下落という、当初の意図と反対の結果になってしまっている。
正しい手法はこうだ。
【過去の同月同曜日、同時間帯の実績などを元に、今年度の各便の需要を予測する→その需要において収益が最大となる運賃額と乗車人員の組み合わせを推計する→その運賃額で販売開始→販売期間中、予約のペースが予測と乖離すれば値上げまたは値下げ】
大切なことは、予約のペース(ブッキングカーブ)をチェックすることだ。
最終的な乗車率は、曜日や時間帯により60%なり90%なりと便ごとに異なるわけだが、その乗車率に到達するには、それぞれ20日前に〇%、10日前に〇%、という「目安」があるはずだ。
その「目安」を上回っていれば値上げ、下回っていれば値下げするのだ。逆に言えば、予測通りに予約数が伸びている限り、販売開始時の運賃額を変更する必要はない。
この手法で取り組んでいる路線では、あくまでシステム上の試算だが、ダイナミック・プライシングを導入しなかった場合に比べ相当な増収を実現している。
これらの路線では、その増収額を何に再投資すれば路線の活力が上がるか、という議論に移ることができる。前向きのサイクルを動かし始める最初の原資が生まれるのだ。
相変わらず不安定に上下する新型コロナの感染状況の中、人口減少やコロナによる乗客減→コスト抑制→サービス水準低下→さらなる乗客逸走という負のサイクル、「貧すれば鈍する」状態だけは回避したい。今が踏ん張りどころだ。
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