新幹線や特急電車のように、トイレを装備しているバスもよく見られる。バスのトイレはいつ始まり、どんな種類の車両に付いているのだろうか。
文・写真:中山修一
ルーツは昭和の高速路線バスにあった?
何らかの乗り物に乗って、止まらずに長い距離を行けば行くほど、トイレは重要な役割を担ってくる。
それぞれの公共交通機関の歴史を軽く遡ると、鉄道で初めてトイレ(と呼べる設備)が付けられたのは1880年代(日本は1898年頃)、航空機で1920年代と言われている。
日本においては、1963年に名神高速道路が開通し、高速路線バスの運行が開始された1964年以降になって初めて、バスの車内にトイレが設置されるようになった。公共交通機関のトイレ事情に関してバスは遅咲きだったと言える。
なぜ最初が高速路線バスだったのか……これには、車内にトイレを設けて休憩停車を省略することで所要時間を短縮させるほか、乗客の希望または“緊急時”などのトイレ対応によるダイヤの乱れを防ぐ意図が含まれている。
ちなみに初期の(現在もヨーロッパの一部で使われている)鉄道用トイレは垂れ流し式で、覗き込むと穴の先からレールが見えるまさに直管だった。
バスの場合そのまま道路に撒き散らすわけにはいかないため、タンクに貯めて運行終了後に基地で浄化処理する方式が最初から用いられている。
どんなバスにトイレが付いているのか
後発と言えどバスにトイレが付いてすでに60年近くが経つ。最近のバスのトイレ事情はどうなっているだろうか。
今日でも、やはりトイレ付き=高速路線バスの図式がかなり強い。特に時間がかかる中・長距離路線になると、トイレ付き車両で運行する便も増える。
日本車ではバスの進行方向左側の一番後ろ、あるいは右側の中寄りがトイレの設置スペースになっているレイアウトがほとんどである。
最近は最後部の幅いっぱいをトイレとパウダールームに割いた、広々とした化粧室が自慢の車両も各地で登場している。
高速路線車の一方でトイレ付きの一般路線車はあるのかと言えば、全くのゼロとは言い切れないものの、あったらあったで相当珍しい。
一般路線車にトイレがないのは、まず一般路線バスでトイレが必要となるほどの距離をノンストップで走る例が少ないことと、高速バスに比べ発進停止・方向転換が頻繁に行われる分、利用中の転倒など安全上のリスクを伴う点が大きいだろう。
ただし、高速道路を走行しない一般路線バスにトイレ付きの高速路線車が使われる場合もある。一般路線バスとして運行中にトイレが使えるか否かは、路線や事業者によって異なる。
また、観光バス/貸切バスとトイレの関係はけっこう希薄で、付いている車両はごく少数派だ。トイレを設置した分だけ定員が減ってしまうことや、後処理など手間やコストの問題と思われる。
もっとも貸切バスなら、一度にそこまで長距離を走らず、こまめにトイレ休憩を挟むついでにお土産物屋さんなどへ誘導すれば経済の活性化にも繋がるため、貸切車はむしろトイレなしのほうが、総じて得られるメリットが多くなるという考え方もある。
コメント
コメントの使い方