路線バスでは標準装備になっている行先表示器。車体の前後はもとより、側面にも表示器を取り付けるのが一般的だが、長いバスの歴史の中で、側面の行先表示器はどんな進化を遂げてきたのだろうか。
文・写真:中山修一
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■一目で多くの情報を!!
停留所にやってきたバスが、自分が行きたい場所まで向かう便かどうかを知るには、まず前面の行先表示を確認するのが普通だ。
前に行先表示があれば事は足りると言えばそうだが、状況によっては見逃してしまう場合もある。
そうなると、一旦列を抜けてバスの前まで行き、表示器を確認して列に並び直す……のようなアクションが必要になってしまい、何かと手間だ。
そんな時、バスの側面にも表示器が付いていれば、そのまま列に並びながらバスの行き先が確認できる。
側面の行先表示器は、利用者にとっても有難い設備の一つと言えそうだが、いつ頃からあるのだろうか。
行き先を板に書いて車体の側面に掲示するスタイル自体は、自動車が発明される以前の馬車の時代から存在している。
行き先を書いた板のことを「サボ」とも言うが、サボ式はバスだけでなく鉄道や船舶など、様々な種類の公共交通機関で幅広く活用され、現在も一部で見られる。
サボ式はもとより、バスの前後に付いているような、巻き上げ(巻き取り)式の「方向幕」が側面にも取り付けられるようになったのは、日本では1950年代くらいからのようだ。
■だんだん大きくなっていった表示器
初期の側面行先表示器(方向幕)には、前後用の表示器を少しスケールダウンさせたような、横長でやや小さ目のものが使われていた。
行き先が大きく記された前後用の方向幕と異なり、側面用では主な経由地を併記しているタイプが多い。
技術の進歩にともない、側面方向幕は独自に大型化していき、横長から正方形に近いサイズへと変わっていった。
これにより一度に表示できる情報量が増えたほか、文字を大きくできるようになり、見やすさも向上している。
表示方法が幕からLEDへと変わっても、表示器自体の面積は依然大きいまま今日まで推移している。
LED方式では、上段に行き先・下段に経由地を表示するレイアウト固定タイプと、プログラム次第で何でも表示できるフリータイプに分けられる。
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