連日ニュースで報道されるバス運転士不足の問題。もちろんバスに限らず運輸業界全体でドライバー不足は深刻だ。ニュースの事実は事実として受け止めるとして、どうすればよいのかということも考えていかなくてはならない。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
(写真はすべてイメージで本文とは関係ありません)
■修学旅行の手配がつかない
先日は沖縄県で修学旅行生の貸切バスの手配が付いていないというニュースが流れた。手配ができていない貸切バスの台数は延べ1200台。不足する運転士は180名と推定される。加えてガイドも不足している。
この非常事態を受けて沖縄県では他県から人材誘致のために4000万円の予算を計上し、年末までの修学旅行受け入れのためにバス事業者を補助する流れで動いている。ここまでが事実としてのニュースだ。
賛否両論あろうが、沖縄県がとろうとしている措置は評価できる面がある一方で、他県でも運転士が不足して路線バスが減便や廃止になっているのに運転士を簡単に融通できるのかという疑問もある。しかし何もやらないよりは直接的に行政が動いたことは評価したいし、テストケースとして成り行きを見守りたい。
■国民的な議論が必要
バスマニアや専門家に限らず、こうなってしまえば広く国民一般からアイデアを持ち寄り議論することが必要だろう。前述の沖縄県の例では喫緊の課題であくまでも年末までの緊急措置なので「金で解決する」的なことしかできなかったのだろうが、中・長期的な運転士不足を解決する手段は別途構築する必要がある。
バス事業者はほとんどの路線が赤字で、営利企業である限りは赤字路線はお荷物として廃止したいのが本音だろう。しかし公共交通機関としての使命を打ち出している限り「ご利用低迷により…」だけで簡単に廃止はできなかった。
ところがコロナ騒ぎでそれを理由に減便を推し進めて合理化をしたものの、便数が回復しないまま今度は運転士不足を理由に減便・路線廃止が公然と行われるようになった。それ自体は事実なのだが、本当の長期的な理由は運転士不足であることは分かっていたはずだった。
事業者の苦しい胸の内は理解できるが、きれいごとだけでは問題解決にはならない。現に事業廃止事業者が出てしまうほど深刻な状況になってしまってからでは打てる手は少ない。今後は体力のある事業者だけが生き残る流れになってしまう。
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