地元民はもとより、予備知識がないとまず読めない地名が全国各地で満遍なく見つかる。そんな難読地名が、ほぼそのまま駅やバス停の名前に使われることも多々あり、頭を悩ませると共に話題を提供してくれる。
文・写真:中山修一
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■出雲の国の立久恵峡
日本有数の観光ならびに参拝スポットで知られる島根県出雲市。ここを訪れたなら誰もが足を運ぶであろう出雲大社の完全な真逆方向に「立久恵峡」という場所がある。
JR出雲市駅/一畑電車電鉄出雲市駅から内陸へ11kmほど。立久恵峡は出雲市を流れる神戸川(かんどがわ)の上流沿いを約1kmにわたって続く、高さ100〜200mほどの渓谷で、古くから景勝地の一つに数えられる。
自然の美あふれる渓谷には遊歩道が整備され、周辺を散策して楽しめる。さらに温泉地でもあり、旅館が数件営業していて宿泊もできる。
いつも大勢の人々で賑わう出雲大社とは対照的に、川の流れる音だけが聞こえてくるような落ち着いた場所だ。
■昔は線路が通っていた!?
実はこの立久恵峡には、その昔鉄道の線路が通っていた。現在は出雲市〜出雲大社や松江へのアクセスに便利な一畑電車(当時の一畑電気鉄道)が運営していたもので、経由する景勝地にちなみ「立久恵線」の路線名が付けられていた。
元々は島根県と広島県を繋ぐ目的で計画された私鉄だったと伝えられる。しかし諸事情が重なり、出雲市から18.7km地点の出雲須佐まで線路ができた時点で工事は中断、その後延伸することはなかった。
同路線が一畑電気鉄道の一部となったのは1954年。“電鉄”ながら立久恵線だけは非電化で、蒸気機関車/ディーゼル機関車牽引による客車列車であった。
1958年の時刻表によれば、1日大体12往復くらいの列車が出ており、全区間の所要時間が45分〜1時間程度。運賃は出雲市〜立久恵(時刻表では立久江)間が50円、出雲市〜出雲須佐間が80円とある。
利用率は芳しくなかったようで、1964年の集中豪雨で線路が損壊したのをきっかけに運休となり、復旧しないまま翌1965年に廃止となっている。
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