「バス」はマクロな乗り物であるため、誰もが知っているほどメジャーな存在になるケースは珍しい。しかし例外はもちろんあり、その中で世界を跨いだ知名度を誇るのが、英国の2階建てロンドンバスと、アメリカのスクールバスだ。
文:中山修一
写真(特記以外):バスマガジン編集部
(アメリカのスクールバスの写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)
■注目度世界一の送迎バス
「学校」と名の付く通り、児童生徒が自宅と学校の間を移動するために用意されている交通手段がスクールバスだ。
アメリカでは州によって異なるようだが、学校に通い始める頃〜運転免許を取るまでが、大まかな利用対象年齢になっている。
自宅から学校までの距離も利用可否の基準になっているようで、こちらも地域によって差があり、1.6km(1マイル)以上あるいは3.2km(2マイル)以上だったり、学年で距離が変わる場所も見られる。
何よりも子供を保護する観点から、スクールバスには一般的なバスよりも高い安全性が求められており、実は細かな規定が決められている。
規定には車両の規格も含まれ、車体の大きさやドアの寸法のほか、「色」も重要な点であるのがポイントだ。
■どうしてボディが黄色に?
アメリカでスクールバスが走り始めたのは、それこそ自動車の黎明期まで遡れるほど昔の話らしい。とはいえ初期の頃は規定などなく、地域や学区によってバラバラであった。
「それでは良くない」と考えた人物が、アメリカのコロンビア大学で教授を務めていたフランク・W・シアー博士と言われる。
1地域に留まらず、アメリカ全土で共通の基準を設けて、より安全な通学手段を確保するよう働きかけを行ったとされる。
それにより、1939年4月に車両の各所寸法や色など44項目の安全基準が制定されることになった。この基準には車体の色も含まれ、複数のサンプルを比較して選ばれたのが黄色だったわけだ。
何故黄色になったのか……これは見た通り「目立つから」という理由が最も大きい。遠くからでも視認性の高い、とにかく目立つ色で統一すれば、誰が見ても黄色いバス=児童生徒の送迎用だと判別が付いて安全啓発につながる、という期待も持たれていたようだ。
■単に黄色いだけじゃダメ?
アメリカのスクールバスは「黄色」ではあるものの、やや濃いめ・艶ありの黄色で実際はオレンジに近い。
色合いさえ似ていればOKというアバウトなものでは決してなく、現在は色指定がちゃんとあり、連邦規格595Aの「13432」に準拠する必要があるそうだ。RGBカラーコードは245,165,0に相当。
典型的なスクールバスの形状である、ボンネット型車両のボンネットの部分にも色が指定されており、ボディと同じ黄色もしくはツヤ消し黒、連邦規格595A「37038(RGB: 55,55,56)」にする、とある。
バンパーの色も要指定で、こちらは連邦規格595A「17038(RGB: 12,15,16)」に準じた艶ありの黒だ。
色に関連したものでは、車体に高さ約20cm(8インチ)以上のサイズで、車体前後の、一般的なバスでは行先表示器が付いているあたりに「SCHOOL BUS」と記すのも義務付けられ、ほとんどの場合、黄色に対してコントラストの強い黒で書かれている。
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