地域超限定……路線バスじゃない“路線バス”が空港にやってくるってマジ?

地域超限定……路線バスじゃない“路線バス”が空港にやってくるってマジ?

 路線、高速、観光、貸切など、空港には様々な種類のバスが集まってくる。中には、ごく限られた空港でしか見られない、ちょっと風変わりなバスもあるようだ。

文・写真:中山修一

■路線バスじゃない“路線バス”

旅先での行動範囲を劇的に広げるレンタカー
旅先での行動範囲を劇的に広げるレンタカー

 そんな風変わりなバスが出入りする場所が北海道の新千歳空港だ。ターミナルビルから出てバス乗り場脇に立って5分もしない間に、普通の路線バスでよく使われる見た目をした車両(路線車)が次々と通過していく光景に出くわす。

 どれも車体にはレンタカー会社のロゴが描かれており、広告ラッピングを施した一般路線バスなのかと思いきや、これらのバスは路線バスではなく、描かれている通り各レンタカー会社の店舗が用意している送迎用の車なのだ。

 空港を出発点にしてレンタカーを借りると、実際の店舗まで送迎が付いてくる場所は多々あるが、送迎車といえばワゴン車か大きくてもマイクロバスが相場と決まっている。

 その固定観念を根っこから穿り返すように、日頃の足で見慣れた形の路線車が堂々たる姿を現すとなれば、初見では相当ビックリさせられる。

空港とレンタカー店までの送迎に“普通の”路線バスが!?
空港とレンタカー店までの送迎に“普通の”路線バスが!?

 もちろん送迎車ゆえにレンタカーを予約した人だけが利用できる。レンタカーを使わない限り縁のない乗り物ながら、白系、赤系、黄色系、青系等々……普通の路線バス以上に色のメリハリが効いた、各社のコーポレートカラーで彩られたバス車両を観察するだけでも楽しい。

 ナンバープレートの平仮名の部分に目をやると、どのレンタカー店の送迎車も「は」や「ね」といった自家用登録されており、有償での営業運転はできない無料送迎専任のクルマであるのが見て取れる。

■大きなクルマが必要なワケは?

 本格的な大きさのバス車両が必要になる事情を探ってみると、新千歳空港の立地や規模が深く関わっているようだ。

 まず、空港ターミナルビルから実際のレンタカーが置いてある場所まで、どの店舗も大体5kmまたはそれ以上離れている。

 5kmといえば、普段なら公共交通機関を使って移動するような、ちょっとした距離だ。この時点で新千歳周辺のレンタカー店へはアクセス用の送迎車が不可欠になる。

 距離的な理由に加え、国内線だけで1日およそ380便もの飛行機が発着する大空港ということで、出発/到着とも受付まで一度に集まるレンタカー利用者の数もそれ相応のはずだ。

レンタカー利用者が特に多い空港だけでしか見られない光景
レンタカー利用者が特に多い空港だけでしか見られない光景

 では、送迎用に路線車を使用している新千歳周辺のレンタカー各社の店舗には何台くらいクルマがあるのか。

 各店舗とも台数はその日によって流動的と思われるが、新千歳空港に店舗を置く、代表的なレンタカー業者のレンタカー専用駐車場を衛星写真で見て、置いてあるクルマの数をカウントしてみた。

 結果、普通乗用車に絞って412台まで数えたところでイヤになってしまったが、選んだ場所と同じくらいの広さを持ったレンタカー駐車場が周辺にいくつもあった。

 新千歳には数百台単位でレンタカーを用意できる業者が何社も揃っている、と考えておいて良さそうだ。

 利用者の数やレンタカーの台数を踏まえると、確かにワゴン車やマイクロバスでは輸送力が心許ないかもしれない。

 また、もし大型スーツケースのような荷物を持っていても、比較的手早く乗降できる点まで考慮に入れるとすれば、路線車に白羽の矢が立つのも自然と言えそうだ。

 新千歳空港とレンタカー店舗を結ぶ路線バスタイプの送迎車では、どのレンタカー業者も定員60名クラスの中型路線車を主力に据えている。

 元は全国各地の一般路線バス事業者で使われていた車両を、中古で購入して送迎用に改装したものが結構あるようだ。

次ページは : ■地域限定の超レア物!?

最新号

【9月20日発売】巻頭特集は「東急バス」!! ほか楽しいバスの企画満載の バスマガジン126号!!

【9月20日発売】巻頭特集は「東急バス」!! ほか楽しいバスの企画満載の バスマガジン126号!!

バスマガジン Vol.126は9月20日発売!! 美しい写真と詳細なデータ、大胆な企画と緻密な取材で読者を魅了してやまないバス好きのためのバス総合情報誌だ!!  巻頭の[おじゃまします! バス会社潜入レポート]では、東急バスを特集。東京都から神奈川県において都市部から住宅地、田園地帯まで広いエリアを綿密なネットワークを展開、さらに高速路線バスやエアポートリムジンも大活躍。地域住民の足としてはもちろん、首都圏の動脈ともいえる重要な存在だ。  続く特集は、ついに日本に上陸しさらに種子島での運行が決まった、ヒョンデの電気バス[ELEC CITY TOWN]の試乗インプレッション。日本におけるヒョンデの本拠地である横浜・みなとみらい地区で、徹底的にその性能を確認した。  バスの周辺パーツやシステムを紹介する[バス用品探訪]では、なんと排出ガスからほぼ煤が出なくなるというエンジンオイルを紹介。この画期的な商品「出光アッシュフリー」について、出光で話わ聞いてきた。  そして後半カラー特集では、本誌で毎号、その動向、性能を追跡取材してきた「カルサンe-JEST」。このトルコ製小型電気バスがついに、運行デビューを果たした。その地は長野県伊那市と栃木県那須塩原市。今後の活躍が期待される出発式を紹介する。