もう気分はハリウッドだぜ!! 日本の狭い道でアメリカンなスクールバスに昂ったぞ


 いつもバスマガジンに珍しいバス、楽しいバスの試乗を実現してくれるオノエンジニアリング。たまたまお伺いした時に間近で見るとめっちゃ大きいアメリカンなスクールバスを発見。

 うーん、めちゃくちゃ凄いぞこれ。乗せてくださいと頼み込みベテランジャーナリストの近田さんが乗り込みました。50年ぶりのボンネットバスの運転、なんて言ってたけど何歳からバスを運転してるんですか!?

 近田さんのキャリアの長さにも感動しつつ、アメリカの風をムンムンに感じるスクールバスにも酔いしれました。日本で乗ると違和感半端ないですが、これはこれですごく楽しい。そんなバスのおもしろさをお伝えします。

【画像ギャラリー】合理性の塊か!! アメリカのスクールバスが凄い

文:近田茂/写真:石川智
取材協力:オノエン観光


■バス好きにとってもスクールバスは特別な存在だ

通常の大型バスでは厳しそうな路地も、児童・生徒を送迎するスクールバスなら走らなくてはならない。意外にもスルーっと通過できた

 8mのハイデッカー、オノエンスターをはじめ、エアロキングの試乗など、これまでバスマガジンに貴重な取材機会を頂いているオノエンジニアリング。

 今回同社保有のアメリカン・スクールバスの試乗が実現した。アメリカのTVや映画ではお馴染みの黄色いボンネットバス。国内にも輸入されてはいるが、英国製の2階建てバス以上に貴重な存在といえる。

 改めて実車を目前にすると、黄色に黒いラインをあしらったエクステリアデザインは、明確にスクールバスであることを主張している。誰の目にもわかりやすい。単純明快という意味での配慮が徹底される点は日本も見習うべきセンスがあると思えた。

 アメリカ本国では児童・生徒の乗降でスクールバスが停車すると、対向車も含めてその道路を走る全ての車両が停車し、生徒の乗り降りと道路横断の安全が確保される。周辺のクルマは停車し続けて待つ。決して追い越したりはしないのだ(編註:ほぼすべての州でスクールバスが停車中の追い越しや追い抜きは法律で禁止されている)。

 トラックをベースに製造されているため、全体から見たホイールベースやフェンダー、車高の印象などに、若干トラックの面影が残る

ベースがトラックなので全体から見たホイールベースやフェンダー、車高の印象などに、若干トラックの面影が残る

 生徒の送迎時の安全を社会全体で守るシステムが出来上がっていて、そのアイコンとしてこの良く目立つイエローのスクールバスは欠かせない存在になっているわけだ。

 日本でも園児バスなどは沢山走っているが、それぞれ園の特色やセンスを込めたデザインが施されている。

 バラエティに富み楽しくはあるが、社会全体の注意を引きつける役割は担っているとはいい切れない。お国柄の違いだろうが、スクールバスの潔さがとても輝いて見えた。

■ナビスター製スクールバスから見えるアメリカの合理的思考

運転席のレイアウトは直線基調でちょっとクラシカルだが、機能一点張りのストイックな仕上がり。補助スイッチ類も少ない

 車両はナビスター・インターナショナル社製。日本では馴染みの薄いブランドだろう。元々はIH(インターナショナル・ハーベスター)として知られる北米の大型トラックメーカーで、農業機械産業が集まってできた会社だった。

 1985年にトラックメーカーへと転身を図り、商用車メーカーとして定着。アメリカで第4位のシェアを誇り、一昨年にはフォルクスワーゲンが出資して業務提携も結ばれた。

 さて試乗車の車検証をチェックすると、車名欄には「ナビスター」と記されていた。簡単に車両解説をすると、いわゆる貨物用トラックのラダーフレームに、バス車体製造を手がけるトーマス社がボディを架装して造られている。

 いわゆる平ボディの荷台位置がバスのフロアになるデザイン。結果的にかなりの床高となるが、客室内のフロアは前から後ろまで傾斜の無い完全にフラットなフロアが構築されている。試乗車の全長は8460㎜、全幅は2440㎜、全高は3060㎜で車重は7430kgと日本の中型バスサイズだ。

 乗車してみると運転席と折り畳み式の助手席があり、後方の客席は左右対称に2座シートが8列。右シートには補助席もあるので40人の乗車が可能。全42人乗りで車両総重量は9740kgになる。

ぶ厚いレザー製のシートは耐久性も高く、汚れも落としやすい。スクールバスとしてベストチョイスの設定だ

 リヤオーバーハングの長いフォルムがいかにもスクールバスらしいが、機種によってはさらに長いボディを架装するケースもあるというから驚きだ。入り口は外側へ開く観音開き式。窓は上下スライド式。非常口は通路最後部に設けられていた。

 児童・生徒が乗車するスクールバスのため、非常口の対応は万全。通常のバスと違ってエンジンが後に無いため、最後部に大きく開く非常口がある。

 正直、ちょっと驚かされるのが感覚の古いデザイン。質実剛健で洗練度の足りない建機のコクピットに納まるようなイメージだ。ズラ〜っと居並ぶスイッチを始め、メーターも製造しやすい都合で組みつけられており、およそドライバーにとっての見やすさや操作性云々を考慮されているとは思えない。

ボンネットはエンジンルームだ。ラバーロックを外して前方へ展開することで開放する

 そう言えば筆者は50年近く前に1度だけボンネットトラックの運転経験があるが、今回のボンネットバスの運転はまさに初体験。

 やや緊張気味にエンジンを始動すると7640ccのディーゼルエンジンは、いかにもな音と重々しい回転フィーリングを披露。これもまた建機のそれをイメージさせた。

 大容量トルクコンバーターを採用した4AT のセレクターをD レンジにいれてスタート。回転慣性の重い噴き上がりでエンジンが唸りを上げる。アクセル全開でも加速力は穏やかだ。

 シフトアップ時にグッと前に出る加速を伴う変速ショックの大きな乗り味は、かつて空港ターミナルバスで体験した懐かしいアメリカンな感じ。

 非常ドアは簡単に開くが誤動作防止のため、ロックレバーを動かすとブザーが鳴り響き、状況を伝える。また再度ウインドゥにあるレバーで、ガラスを外して非常時脱出することもできる

 エンジンブレーキはほとんど利かず、エアオーバーのブレーキで減速。ステアリング操舵も重い運転感覚は楽しくもあり、半世紀前にタイムスリップした様にどれも特別なものだった。とにかく子どもたちを安全に送迎する、という能力に特化した、スペシャル・バスなのである。

ボンネットの内部には巨大なエンジンが載る。エンジンルームは意外と狭い印象だ