バス運転士不足問題でよく言われるのが拘束時間も問題だ。これは一体どういうことなのか、事業者により考え方も制度も異なるだろうが、賃金に直接かかわる事なのでいくつかのケースを調べてみた。本稿には5月のバス占いも付録するので、合わせてお楽しみいただきたい。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
(写真はすべてイメージであり本文とは直接関係ありません)
■運転士のダイヤ「仕業」
バス運転士の仕事は高速バスを含めた路線バスの場合はバスを運転しダイヤ通りに運行することであり、貸切バスの場合は貸し切られたバスで指定された経路で旅客を輸送することである。もちろん、それに付随する業務を含めての話だ。
付随する業務とは、出退勤時の点呼や車両等の点検、路線バスであれば金庫の扱いや事業者によっては清掃業務もあるだろう。これら運行に付随するすべてを合わせたのが業務だと言っても良い。運転士には法令で定められた休憩時間が必要で、運転士一人がその日に乗務する、いわば運転士の勤務ダイヤとも呼ぶべき仕業を組む際にはそれらが考慮されている。
この仕業とは、1本のバスの単純往復ダイヤを複数回という場合もあるし、バスを途中で他の運転士に引き継ぎ、後の便のバスを引き継ぐ間を休憩とする場合もある。1日の運転士個人の仕業を集めたものが交番表と呼ばれる一覧表で、営業所内で一目瞭然の場所に掲げられている。
■高速・貸切に多いハンドル時間制
これら法令で定められた所定の休息時間は当然としても、場合によっては折り返しの便や次の乗務便までの運転開始までかなりの時間を待機とするダイヤもあるだろう。高速バスの場合はこのケースが多い。夜行バスの場合で他の運転士に引き継ぐワンマン運転を実施する路線では、バスを引き継いだ後は数時間から丸1日何もないという仕業も存在する。
このような長時間の待機は休息時間ではなく勤務からいったん解放されるという事業者もある。勤務からの解放なので拘束時間ではないのが建前だ。この途中の時間を勤務時間として賃金が支払われるのであれば特に不満は出ないだろう。
しかし実際には勤務時間とはならず、拘束時間が長くなっても超勤手当は出ない場合がほとんどだ。これがハンドル時間と呼ばれる、ハンドルを握っている時間だけが勤務時間とカウントされる仕組みだ。
営業所近くに住んでいて入庫して勤務解放の場合は一度家に帰り休息することも可能だが、遠く離れた高速バスの行先地で解放された場合は、実質的に何もすることができない。勤務時間ではないので何をしても良いのだが、拘束されているのと同じであり不満が多くなる要因になっている。
■路線バスの場合は事業者による
一般の路線バスの場合は事業者により考え方が異なり、一律ではないのが現状のようだ。上記のハンドル時間で勤務時間を計算する事業者が多いようだが、拘束時間で計算する事業者もある。拘束時間で計算される場合は、昼休み等の事業者が定めた時間(昼休み1時間というケースが多い)はカウントしないが、その他の小休息や折り返しの待機時間、入庫から次の出庫までの乗り継ぎ時間はすべて勤務時間としてカウントする事業者もある。
拘束時間制の勤務形態の場合、正社員や契約社員で月給制の場合は、所定の勤務時間を超えるとカウントされた拘束時間分の超勤手当が付く。時給制のパートタイムによる臨時運転士の場合は、元から時給制なので拘束されている時間は昼休み等の事業者が定めた休憩時間を除いてすべて時給計算される。
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