ヨーロッパを鉄道で旅していると、突然の工事などで列車が運休になるということが、かなりの頻度で発生する。
文・写真:橋爪智之
構成:中山修一
(バスマガジンWeb/ベストカーWebに、ヨーロッパで列車が止まった時に登場する例の乗り物の写真があります)
■きょう(も)列車休みます
日本でもたまに、工事を理由に列車を運休させる光景を目にするが、たいていの場合は週末とか、夜間工事の延長で朝の数時間、ローカル線に至っては利用の少ない昼間だけ、のようなパターンだ。
一方ヨーロッパで見かける運休は、数日から数週間、場合によっては数か月単位で路線が閉鎖されることもあり、しかも地方ローカル線ではなく本線という場合もある。
輸送人員が桁違いに多い日本では考えにくいが、ヨーロッパの場合は工事を短時間集中で一気に仕上げたり、工事をしながら列車の運行も続けたり、ということはせず、工事中は潔く列車の運行を止めてしまう。
■工事区間に運行される代行バス
その間、列車の乗客を代わりに輸送するのが代行バスだ。不通になった区間の移動手段にバスを立てるのは、バスもしくは乗合タクシーで対応する日本の鉄道とほぼ同じ要領と言える。
ヨーロッパではたいていの場合、工事は路線全体の一部区間のみで行われる。その工事区間だけに代行バスを用意し、当該区間の前後は通常通り列車での移動になる。工事区間の駅に到着すると乗客は全員下車、駅前に移動して代行バスに乗せられる。
工事区間は1駅間だけではなく、数駅間に跨る場合もあるため、その場合は中間の各駅へバスを走らせなければならないが、必ずしも線路に並行して道路があるわけではないため、1つ1つの駅に寄り道すると迂回のため大幅な時間のロスになる。
そのため、駅ごとにバスが用意されて、乗客は自分の目的地へ向かうバスに乗らなければならないこともある。
もちろん駅には案内係がいて、乗客の行き先に応じて振り分けを行っているが、ローカル線だと地元住民しか乗らないため、母国語以外通じないことがある。
ハッキリと目的地が分かっていれば、迷うことは無いだろうが、言葉が通じないと不安に思うこともあるかもしれない。
■大きい荷物や自転車の積載には難儀する
バスは地元のバス会社が用意しており、路線用車両の場合もあれば、観光用車両が使われていることもある。
ヨーロッパでは、列車に自転車を載せて旅する人が多いのだが、バス代行になると自転車を載せる場所に難儀するシーンをよく見かける。
たいていは、路線車に設けられた車椅子スペースに無理やり積み込んで走らせているが、万が一載せられなかったら、次のバスまで待たなければならないのだろうか。
国際列車が走るような幹線での代行の場合、車体床下にトランクを設けた観光車が使われているパターンが多い。
国際列車の場合、大型スーツケースを持ち込んでいる乗客が多いため、荷物室を設けた観光車の方が荷物を載せるスペースに余裕があるため有利なのだろう。
■事故運休の悲惨な代行バス体験
バスによる代行は工事だけとは限らない。事故や車両故障といった不測の事態が発生した場合、急遽運行されることもある。
筆者が以前、夜行列車でドイツのミュンヘンから、スロヴェニアのリュブリャーナへ向かっていた時のこと。
オーストリアとスロヴェニアの国境駅で、深夜に発車時刻を1時間以上過ぎても停車したまま。何かあったのかと思ったらこの先で事故が発生していた。
クロアチア人の車掌は英語が通じず、状況を理解するのに手間取ったため、代行バスに乗らなければならないと気付いたのはかなり経ってからだった。
駅前には古い路線バスが停車しており、遅れてきた私たちを乗せたらすぐに発車となった。「この東洋人は何をやっていたのだ」という感じの冷ややかな視線(あくまで想像)が痛い。
まだ夜が明けきらぬ田舎道を走るバス。カーラジオから聞こえてくる音楽と、それに合わせて鼻歌を歌う陽気な運転手。
言われるがままに乗車したが、このままどこか変な所へ連れて行かれはしないだろうか、他の乗客たちの顔は一様に暗く、一層不安な気持ちにさせられる。
…もっとも、深夜に叩き起こされてバスに乗せられ、状況の飲み込めてない東洋人のお陰でその発車が遅れたとなれば、不機嫌にもなろうというもの、かも。
結局、バスは隣の駅に無事に辿り着き、待っていたローカル線に揺られて無事リュブリャーナに着くことができた。
これは筆者の代行バス体験の中でも、かなり酷い経験の一つとして、たびたびネタにしている。しかし上(?)には上がいるものだ。
夜行列車のシャワー・トイレ付きデラックス個室を、何カ月も前に予約して意気揚々と乗り込んだら、始発からわずか1駅で列車が運転取りやめに。
高額なチケットを手配したというのに列車を降ろされ、窮屈な4列座席のバスに乗れと言われ、そのまま終点まで輸送された……
……という、言葉にもできない悲惨な体験をした友人の話を聞き、自分の経験もまだまだか!? と思わずにはいられなかった。
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