日本の路線バスではお馴染みなのが運賃箱。運賃の現金収授はもちろん、ICカードでの決済、紙幣の両替など世界的に見てもその多機能ぶりは日本の運賃箱ならではのもの。
ICカードの普及もあり、事業者によっては現金以外での運賃収授が9割を超えているなか、2024年11月より完全キャッシュレス決済運行の実証実験もはじまり、日本でもバス運賃の完全キャッシュレス決済が当たり前になろうとしている。
取材にいくと用意されていたのが、小田原機器の最新運賃箱“RX-FCM”。従来機と比べ設置床面積で15%、重量で30%の小型軽量化を実現。そのスリムさもあり、グッドデザイン賞を受賞している。操作パネルを10インチに大型化することで運転士の操作性も向上させている。
(記事の内容は、2025年3月現在のものです)
取材・執筆/小林敦志
※2025年3月発売《バスマガジンvol.128》『バス用品探訪』より
■若い世代で目立つQRコード決済
今回訪れたのは一般的には“運賃箱”などとも呼ばれる、運賃収受機器(以下運賃箱)事業をメインに展開する“株式会社 小田原機器”。社名からもわかるとおり、神奈川県・小田原市に本社を置いている。
実は小田原機器は7年前にスタートした、本企画“バス用品探訪”の第一回で一度紹介している。当時に比べてキャッシュレス社会が進んできたこともあり、運賃箱を取り巻く環境も変化を見せてきているので、改めて最新の運賃箱について話を聞くため再度訪問した。
国土交通省は2024年11月より、18事業者29路線を選定し、完全キャッシュレスバスの実証運行を行っている。
すでに交通系ICカードの普及などにより、バス事業者によっては、全体の9割以上がバス運賃の収受についてなんらかのキャッシュレス決済となっているとも聞く。
今回の実証実験は完全キャッシュレス、つまり運賃収受の方法を100%キャッシュレスにすることにより、バス事業者の経営改善効果やバス運転士の負担軽減に期待が持てるとの判断の下、実証運行を行っているとのことであった。
筆者が訪れた国々では、アメリカの路線バスは、現金対応する日本のバスでもお馴染みのタワー型の運賃箱が設置されていた。しかしタイやインドネシア、マレーシアなど東南アジアの国々では、ICカードのみに対応した、小さなカードタッチする機器が装着されているだけの、完全キャッシュレス運行となっていた。
日本では治安が良いということもあり、いまもなおバス以外においても現金決済が根強く残っている。
諸外国では商店やレストランなどでも、現金を扱えるスタッフは限定的となり、現金対応の自動販売機を外に置くことなどは治安の問題もあり難しかった。
しかしDX(デジタルトランスフォーメーション)により、キャッシュレス社会が浸透していくと、街にはキャッシュレス専用の自動販売機が置かれるなど、日常生活での利便性が明らかに向上した。
日本では国民性もあるが、キャッシュレス社会となっても諸外国ほど目立って生活上での恩恵を感じにくいところもあり現金払いが根強く残っているものと感じている。
取材時には、2022年度グッドデザイン賞を受賞した、キャッシュレス決済対応型運賃箱“RX-FCM”のデモ機を用意してもらった。
ひと目見てわかる従来の運賃箱よりもスリムな設計と、運転士操作パネル画面の大きさがまず目を引いた。
「従来比で80mm幅を縮めた430mmにすることで運転席への出入りをしやすくしました。またバス運転士の高齢化に対応して操作性を高めるため、そこで操作パネル画面を7インチから10インチに拡大しました」(株式会社 小田原機器 代表取締役社長 丸山明義氏)。
また従来機では、小型や中型のBEV(バッテリー電気自動車)バスの設置スペースに段差があり、はみだすことがあったということを考慮して、430mmにしたと丸山氏は話してくれた。
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