東西の電鉄系バスがタッグ!! 港町を結んだサラダエクスプレス号とは【高速バスアーカイブ 第3弾】

東西の電鉄系バスがタッグ!! 港町を結んだサラダエクスプレス号とは【高速バスアーカイブ 第3弾】

 阪神の高速路線といえばサラダエクスプレス、とすぐに連想されるくらいのインパクトが強いが、実はその歴史は比較的浅い。

 近畿の大手私鉄系ではベテランの阪急以外、近鉄、南海、京阪共に1988年から、阪神からは翌89年に長距離バスが登場している。

 東西の強力な事業者タッグのサラダエクスプレスを振り返ろう。

執筆/写真:石川正臣(バスマガジンvol.91より)

【画像ギャラリー】阪神バス/京浜急行バスという東西の強力な銘柄のタッグ!!


ビジネスエクスプレスとしても人気の東西の港を結ぶ当時のドル箱路線

川崎・横浜―神戸 サラダエクスプレス『アンカー号』
阪神電気鉄道(阪神バス)/京浜急行電鉄(京浜急行バス)

 大阪または神戸から津和野、宇和島、横浜、千葉、熊本、鹿児島とほぼ1年で6路線が開業したサラダエクスプレス。

 89年春には津和野。その2番目の路線、大都会の大阪と東京のともに隣町であり、そして港町同士という神戸〜横浜間が開業。相手は同じ大手私鉄の京浜急行電鉄(京浜急行バス)で、後に川崎まで延長された。

アンカー号のパンフレット。このバリエーションを見るだけで、当時いかに力を入れられていた路線かがわかる
アンカー号のパンフレット。このバリエーションを見るだけで、当時いかに力を入れられていた路線かがわかる

 工業都市の玄関口である川崎駅には、とても広いバス乗り場が用意され、そこには1台のよく目立つ神戸行き夜行が出発を待っていた。

 広大な地下街には立派なショッピングモールが再開発されたばかりで、工場エリア方面からやって来た川崎市営バスが到着すると、利用者は降車するとともに小走りで『アンカー号』に乗りこんでいく。

 単身赴任者かとも思われる、仕事終えた働き盛りらしい人々を乗せて『アンカー号』は発車。国道の海側は夜になっても工場の照明によって明るく、眠ることのない京浜工業地帯。乗車しているこの人たちも、この輝きの一員として活躍しているのだろう。

惜しまれつつもサラダエクスプレスの一部が運行終了へ…

 アンカー号は程なく横浜駅に停車。ここからは1日を過ごした若者たちが乗って来る。ここにも地下街が広がり、立派なバス乗り場が用意されている。

 横浜市営バスを見ると、観光スポットが近いためか、ハイカラな印象の町に住んでいるためか、川崎駅とはちょっと異なる印象の横浜市営バスが走り去っていく。

 ちょっと羨ましく思ってこちらのバスも発車。東名高速へは保土ヶ谷バイパスを経由して、横浜町田インター(当時の名称は横浜インター)より入線する。

 東京都町田市に隣接するこのインターは横浜市の西にあるため、横浜市の東側に位置する横浜駅からは少々時間がかかった。

東名高速を走るサラダエクスプレス。このままひたすら西を目指す
東名高速を走るサラダエクスプレス。このままひたすら西を目指す

 ここからは一直線。長距離トラックの路線便と足並みをそろえ、大型車同士が並んで一路西へ。東名から名神、夜が明けたころに京都、大阪を通り過ぎていく。

 高速を降りて神戸市内へ入り、三宮に到着。同じ兵庫の神姫バスも東京から到着し、自社のターミナル吸い込まれていく姿が見えた。神戸も大阪並みに巨大な高速バスのターミナルとして機能している。

 開業から30年。長距離夜行バスはこの横浜、川崎と千葉、熊本、鹿児島の4路線は相手会社のみの運行、または路線運行が取りやめとなり、関東、九州への運行はなくなった。

 つまり東日本では見ることはなくなってしまったが、津和野、宇和島、今治、徳島への運行路線には、親しまれたサラダエクスプレスの車体で、相変わらずの阪神の顔として運行が続いている。

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