高速バスと名が付くものはたいていが高速自動車国道を走り、比較的中・長距離の都市間輸送を担うものが多い。しかし一般の路線バスと同じ区間を高速道路でワープする路線もあるので東京で乗ってみた。運賃は路線バスの3倍だが時間は半分でハイデッカーリクライニングシートだ。
文:古川智規(バスマガジン編集部)
写真:小野寺利右
運賃3倍だけど時間は半分!
記者が乗車した「高速バス」の区間は墨田区の錦糸町駅から江戸川区の葛西駅までのたった20分。しかし都営バスだと40分近くは掛かるので所要時間は半分だ。
運賃は都営バスの210円に対して高速バスは600円と約3倍するが、地下鉄を利用すると2回乗り換えで30分強、ICで475円だ。さほど高いとは思わないのではないだろうか。
同区間は都営バスだと「錦25」系統で始発から終点まで乗ればよい。京葉道路、船堀駅前を経由して葛西駅前まで行ってくれる。土・休日だとショートカットバージョンの「FL01」系統があるのでもう少し早く到着できる。
一般的にはこれで何の不満もないし十分であるが、この区間に高速バスが走っているのでそちらに乗ってみた。
錦糸町駅から乗車できて葛西駅で降車できる!
この高速バスは東京スカイツリータウンから東京ディズニーリゾートを結ぶ「スカイツリーシャトル」である。京成バスと東武バスの共同運行だ。
この路線が錦糸町駅と葛西駅に停車する。通常の高速バスだとこんなに近い距離ではクローズドドアで降車はできないのだが、面白いことに、東京ディズニーリゾート行きでは錦糸町駅までが乗車のみで葛西駅からが降車のみになっているので(東京スカイツリータウン行きは逆)、錦糸町から葛西までの乗車ができてしまう。
本数は概ね1時間に1本。ディズニーリゾートへの送客が主な目的と思われるので朝は多いと判断して昼前の便を待った。やってきたのは京成バス奥戸営業所担当のいすゞガーラ。もちろんハイデッカー車、リクライニングシートだ。
行先を申告して運賃前払い
運賃は乗車時に行先を申告して支払う。もちろんICカードも使用できる。まさか葛西で降りる人もいないだろうと思いながら乗務員に「葛西駅まで!」と告げて運賃600円をICカードで支払う。
スカイツリーから乗車していたのは予想通り数人で、座席はほとんど空いていた。好きな場所に座り発車時刻になってドアが閉まった。停留所は都営バスのターミナルがある錦糸町駅南口の目の前ではなく、そこから横断歩道を渡った四ツ目通り沿いにある。バス停はリムジンバスと共用だ。
首都高速2区間の高速バス
スカイツリーから出てきたバスは四ツ目通りを南下して錦糸町に到着し、そのまま走れば首都高速道路の錦糸町入口があるのでここから高速だ。首都高速7号小松川線を東に走り、なんと2つ目の一之江ランプで降りてしまう。
首都高速を2区間しか利用しないので高速バスと言えるのかどうかは難しいところだが、2つの観光地をダイレクトに結ぶシャトル路線であることは確かだ。
一之江ランプで首都高速を出た後は、右折して環七通りを南に向けて走る。途中、リムジンバスが発着する一之江駅を通過し、葛西駅に到着する。バス停はリムジンバスと共用だが、本路線は降車しか取り扱わないので停留所に時刻表はない。
子供向けのちょい乗り高速バスにも最適?
記者は葛西駅で下車したが、当地で下車する乗客が他にもいておどろいた。スカイツリーは押上付近だが、そこから葛西まではこのバスに乗車するのが最も早いのだろう。そういうビジネス需要も多くはないがあるようだった。
バスはそのまま環七通りを南に走り葛西臨海公園付近で湾岸道路に入り、終点の東京ディズニーリゾートを目指す。全区間を通しで乗っても乗車時間は52分で運賃は800円だ。
本来的な乗り方ではないのかもしれないが、急いでいる時やちょっとハイデッカーに乗ってみたくなったマニアな方、乗り物大好きなお子様をお連れで大きな高速バスに乗せてあげたいけど長時間だとぐずりそうと心配なパパやママはちょい乗りを検討してはいかがだろうか。
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