日本で走るバスは国内3社と輸入車であるが、合併やOEM供給等の効率化で以前のようなバス事業者独特の車両はほぼない。しかし海外にはお国柄を反映する楽しそうなバスがある。日本において現行法では導入不可能だが楽しそうな寝台車を紹介しよう。
文:古川智規(バスマガジン編集部)
■ボルボ9600
ボルボバスインドが発売するボルボ9600は、ラグジュアリーと快適さを追求したデザインだ。3軸のスーパーハイデッカーで昼行仕様の座席車と夜行仕様の寝台車がある。
寝台車の全長は15メートル、全高は4メートル、全幅は2.6メートルなので、日本で走らせるには無理がある。なおホイールベースは8.35メートル、重量は22.2トンだ。
パワートレインはVolvo D8K63503で、2200rpmで350馬力をたたき出す。燃料タンクは540リットル。なお寝台車は客室にスペースを割くため、トランクの容量は座席車の約半分で8.5立方メートルだ。
■寝台なのに40名乗り?
寝台車の定員は40名と意外にも多い。これは2+1の3列寝台ながらも2段ベッドだからできる技だ。寝台バスといえば中国のそれが有名だが、やはり2段ベッドである。なお全長13.5メートル仕様もあり、こちらの寝台定員は34名で全高は3.8メートルだ。
2+1の座席車をそのまま寝台区画にしたような形で、それぞれの上段に同様の寝台がある。よって昼間に走る場合はベッドに足を伸ばして座る形となるが、前後は壁で仕切られていて背もたれが付いているので、いわゆるシートピッチは区画サイズの1.8メートルということになろうか。
■階段降りれば…
客室中ほどにある階段を降りれば日本のスーパーハイデッカーだと、たいていはトイレがあり交代運転士仮眠室の室内アクセス扉があるのがポピュラーな形状だ。
しかしこのバスは階段を降りると、そのまま外に出ることができる非常扉になっているのが面白い。輸入車の非常扉はここであることが多いが、乗降扉として使用する例もある。
非常扉は通常は正扉の反対側にあるので、右側通行と左側通行が路線上で混在する香港・マカオと中国本土を結ぶバスに採用例が多い。
■日本では無理だけど…
物理的な大きさもそうだが、日本では前述したように完全なベッドによる寝台バスは法律で認められていないので、フルフラットに近い座席であってもシートでしかなくベッドではない。
しかしこのような楽しそうなバスが海外では多く走り、バス旅の選択肢も多そうだ。日本には個室を備えるバスが走っているので、別の方向から楽しむことはできるだろう。
以前のように特徴のあるボデーメーカーで乗車するバス事業者を決めるようなことは難しくなったが、夜行を中心に座席タイプで選ぶことは可能なので吟味してバスライフをお楽しみいただきたい。
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