東京都交通局のなかで最東端を走る路線バスが「船28」系統。なんと首都東京にも関わらず1日のバス本数はたったの13本という、知る人ぞ知る路線だ。
しかしバス好きとしては起点と終点が都営地下鉄新宿線の駅だったり、なにかと話題に欠かない愛すべき路線でもある。年に1回のとあるイベントの際には臨時バスも増便となりかなり賑わう。
今回はこの「船28」系統に実際に乗ってみたので車窓からの眺めと共にこの愛すべき路線を分析しよう。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
【画像ギャラリー】1日13本のみ!都営バス最東端路線「船28」は年に一度だけは臨時バス祭りで大騒ぎ!
1日13本の閑散路線の謎と意義
都営バスの「船28」系統は江戸川営業所臨海支所(はとバス委託路線)の担当だ。同局路線では最東端を走る。起終点である篠崎駅前が都営バス最東端停留所なのだが都営新宿線の駅でもある。もう一方の船堀駅前も都営新宿線の駅で両端が都営地下鉄と被るという路線だ。
地下鉄で乗り換えが必要な駅間をショートカットして走る路線はいくらもあるが、本路線は同じ都営新宿線で篠崎・瑞江・一之江・船堀とわずか10分の距離だ。それをバスで約30分かけて走る。
当然ながら地下鉄をトレースして走るわけはなく、鉄道空白地帯を縫うように走るかと思えば片側3車線のNEXCO管理の道路も快走する。路線開設時から苦しい営業係数をマークしているが年に一度は臨時バスでお祭り騒ぎになる。
地下鉄フィーダー線かつお祭り路線でもある
鉄道空白地帯を走ることから両端の地下鉄駅に接続する生活路線でありフィーダー線であることは言うまでもない。よって都営地下鉄と競合するのではなく都営地下鉄に送客する補完関係にあるといっても過言ではない。
始発から終点まで乗り通す旅客はほとんどおらず(しつこいようだが地下鉄で10分なので)記者くらいなものだ。
しかしながら年に一度は大臨時バス祭りになる。それが江戸川花火大会だ。当日は最寄りの都営新宿線篠崎駅には急行列車が臨時停車し大混雑になる。
2020年は新型コロナウイルスまん延のために中止されたが、例年は近隣の営業所からも応援を仰ぎ、本路線の臨時便として篠崎駅から一之江駅経由で葛西駅までの便が20台近く大集合する。
花火大会の臨時便は多くの人が地下鉄で帰宅の途に就くが、実際には乗り切れない旅客が駅周辺にあふれ大混雑となる。
毎年同じ措置が取られるかどうかは定かではないが、都営地下鉄の初乗りである180円の乗車券を所持する旅客には都営バスの運賃である210円に満たない30円の差額を支払うことで地下鉄乗車券を受け入れるサービスを行う年もあった。同じ交通局だからこそできる臨時的な旅客目線のサービスだ。