交通空白地帯を解消する目的で国土交通省はライドシェア導入に際して自治体支援を強化する施策を発表した。果たして交通空白地帯はなくなるのか。あるいはライドシェアに特化したバラマキなのか。議論を呼びそうだ。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■交通空白地帯を埋めてきた路線バス
開始当初は騒がれたライドシェアだが、最近では話題にすらのぼらなくなっている。ちなみに記者はライドシェアが許される時間帯にそのような場所にいたことがほとんどないが、ライドシェアの自動車を見たことがない。
それはともかく、鉄道やバス路線の廃止や減便で交通空白地帯が広がるどころか、駅がある周辺以外はすべて交通空白になりそうな勢いだ。それは鉄道空白地帯を路線バスが埋める構図が崩壊しつつあるからだ。
バスの運転士が不足してなり手がいない中で現状のダイヤを維持することが難しくなっているのが原因だ。「バスはあるけど動かす人がいない」のでは路線バスは成り立たない。
それでもタクシーが呼べれば駅や買い物や病院に行くことは可能だ。しかしそれすらも難しくなっている。同様にタクシーの運転手もいないからだ。
■ライドシェアを中心に政策が回っている?
そこで国土交通省では交通空白地帯を解消するために日本版態度シェアを導入する自治体を支援をするというのだ。タクシー会社が運営主体となるライドシェアもあれば、自治体主導で運営するライドシェアもある。これらに3年間集中支援をするというのだ。
これに関連して、旅客運送事業を営んでいるバス・鉄道事業者がライドシェアに参入するために、タクシー事業の許可要件を緩和する考えのようだ。
■そもそも論
そもそも論で恐縮だが、交通空白地帯は路線バスが埋めてきて、その運転士が不足しているので空白地帯は解消されるどころか加速度的に広がる可能性が高い。ライドシェアは有効な手段だとしてもタクシーの運転手も不足している中で最も支援しなければならないのはどこなのか、国は見えていないのだろうか。
バス事業者にはバスは山ほどある。タクシー会社にもタクシーはたくさんある。動かす人がいないだけど。最近は鉄道事業者も運転士不足の声が聞こえてくる世の中なのである。バス事業者がタクシー会社を運営してライドシェアをするくらいなら、とっくの昔にバス運転士は充足しているはずだ。
そして大手私鉄ならば傘下にタクシー会社を持っているので兼業する必要がない。バス会社でさえ切り離して子会社にしているのに、直営でライドシェアをする余裕があるとは思えない。
■やらないよりはマシだが
この種の支援策は目的よりも、支援先ありきで予算をつぎ込むパターンが多い。本政策がそうだとは言わないが、ライドシェアありきの政策で交通空白地帯の解消とは程遠いように思える。
本当に空白地帯をなくそうと考えているのであれば、多くの国営企業体が民営化された後で時代に逆行するようだが、極論は廃止路線を国がすべて引き取り国営バスにするのが最も早くて一発で解消する政策だろう。赤字路線を抱えることになるが、利益を出すために極論だが、黒字高速バス路線に無条件に参入できる民業圧迫の優先権を与えてもいいくらいだ。
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