函館を筆頭に、魅力あふれる観光スポットが点在する北海道南部。この周辺には函館バスによる路線網が各所へと広がり、バス遊びをするにあたって最高のルートがそろっている。
文・写真:中山修一
(バスマガジンWeb/ベストカーWebギャラリー内に、道南端っこ路線バスチャレンジの現地撮影写真があります)
■道南の海沿いにある二つの町
函館から西、ちょうど青函トンネルの出入口方面へ海沿いを40kmほど進むと、木古内の町が見えてくる。
木古内に入り、海沿いの国道をそのまま進んでいくと、およそ55km先に北海道最南端の町・松前町がある。
一方、木古内で右折して国道から外れ内陸に移り、山を越えながら約48km走ると江差町に出られる。
松前/江差ともに海沿いに位置する町で、各町の間には、海岸線をトレースするようにして国道228号線が通っており、クルマを使えば1時間ほどの海辺ドライブを楽しみながら移動できる。
■一度も鉄道が通ったことのない場所
この松前と江差には、それぞれ木古内から直通するJRの鉄道線(松前線と江差線)が、前者は1988年、後者は2014年まで営業していた。
しかし、今日の国道228号線と同じところを通って、松前と江差の間を直通する鉄道が計画されたという記録は、鉄道黎明期の明治時代から年月を追って行っても、これといったものが見つからない。
松前線を松前から24km先の大島地区(現在の原口付近)まで延伸させる計画は一応あり、用地確保と路盤工事はある程度進んでいたようだが、結局こちらも実現しなかった。
そういった歴史を踏まえると、松前〜江差/より正確には上ノ国町間の海岸線沿い約55kmは、これまで一度も鉄道が通ったことのない場所、といった実像をチラつかせる。
■完全鉄道レス地帯の公共交通事情って?
マイカーやレンタカーを使えば、国道228号線を通って松前→江差間を簡単にアクセス可能。松前→途中の上ノ国町にある名物のラウンドアバウトまで、右左折不要の豪快な道なりルートが歓迎してくれる。
その一方、こういう場所には公共の足を最低限用意する必要がありそうで、鉄道の全くない区間だけに、昔から路線バスが通っていそうな期待感がわいてくる。
昔はバスがあったけれど今は……のようなションボリパターンだって十分考えられるものの、果たして完全鉄道レス地帯のバス事情はどうなっているのか、様子を見に木古内駅から函館バス521系統で松前に向かった。
■そこにバスあり、だけど!?
松前・江差エリアでは、古くから地元のバス事業者である函館バスが各路線の運行を受け持っている。松前〜江差間にバスがあるとすれば、おそらく函館バスになるはずだ。
問題は松前の町のどこから、国道228号線を北上して江差方面に向かうバスが出ているかだ。松前エリアのバスの拠点は「松前出張所」であるが、市街地から3kmほど離れており少々遠い。
できれば市街地から直で乗っていきたい。そんな路線はないものかとアンテナを張ってみたところ、観光エリアの松前城近くにある「福山」という停留所から出ているバスが正解なようだ。
「大漁くんバス」の愛称が付いた路線がそれにあたる。時刻表を見ると福山始発は1日たった2本という超極細っぷりにショックを受けたものの、これに乗って途中で別のバスに乗り換えると江差まで行けるらしい。なお松前出張所始発もあり、それを合わせると1日5本だ。
もともとこのバスは、古くから函館バスが運行する一般路線バスであったが、2014年にコミュニティバス化して「大漁くんバス」へと変わったそうだ。
コミバスとなった現在も運行は函館バスが引き続き受け持ち、「531系統」の系統番号も割り振られている。
当日は木古内から乗ってきた521系統の同じバス車両(日産ディーゼル+西工96MC車体・元東急バス)が、そのまま大漁くんバスの運用に入っていた。
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