バスマガジン記者が臨時運転士としてフジエクスプレスにバイト採用されたのは既報の通りである。連載でお伝えしている【バス運転士日誌】の本稿では引き続き空車教習での四苦八苦模様をレポートする。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■一般的な路線バス網とは異なるものの…
山梨県で行われた富士急グループの合同研修や沼津まで走り精密測定を行う訓練という2つの大きな山場を越えて、満足していたが、足元を見ればまだ空車教習中でスタートラインにすら立っていないような気がして不安になってきた。
フジエクスプレス東京営業所の路線組は、港区から受託しているコミュニティバスである「ちぃばす」8ルートをはじめ、坂の多い渋谷での住民サービスであるシャトルバス、企業輸送の送迎バス等が担当する路線である。
一般的な路線バス網とは若干異なる色合いではあるものの、港区と渋谷区、新宿区という日本有数の大都市かつ交通量の多い地域しか路線がないのも新任運転士としては泣き所でもある。
■回送ルートに苦労する
地方出身者がまず陥る壁は、路線を覚えることだ。東京の地理をよく知らないのは仕方がないにしても、地理を覚える早道はやはり景色や目印だろう。その景色がどこをどう曲がっても似たようなビルしかなく、狭い地域で右往左往しているように見える路線ではなおさら自位置がわからなくなる。
しかも港区芝浦から渋谷駅や新宿駅までは回送なので、そのルートの方が長いのだ。よって渋谷駅や新宿駅にたどり着くまでが最も大変な覚えるべきルートなのだ。しかも東京の道路はよく整備されているので、渋滞が発生しないように広いのは良いのだが、右左折レーンがしっかりあるので前の交差点から認識してライン取りをしないと通行区分違反となり、そもそも出発地にたどり着けない事態が発生するのだ。
■ひたすら回送ルートを往復する!
そうなることは教官も長い指導の中で承知しているので、回送ルートが不安だと訴えれば、ひたすら回送ルートを往復して覚えてもらう指導をする。その際にはいくつかの目印となる建造物や道路案内板やライン取りの位置を教えてくれる。
その中から自分が覚えやすいものを一つでも目印にできればしめたもので、その点を頭の中で線にするだけで回送ルートが走れるようになるから不思議だ。
■路線は後から!他社局のバスさんありがとう!
新宿や渋谷の路線自体は単純なので、回送でたどり着けさえすれば、数回乗れば覚えてしまう。ただし交通量の多い地域なので、バス停から出る際の注意やコツを停留所個別で教えてくれる。こうした教習車の運転をしていてありがたいのは他社局バスの動向である。
バスベイから出る際に都営バスや東急バス、京王バスや関東バスから積極的に譲っていただき、いつもご迷惑をおかけしている。どこのどなたか知る由もない他社局の運転士殿各位にはこの場をお借りして御礼を申し上げたい。
こうした心遣いは本当にうれしくて泣きそうになるくらい、交通量の多い通りのバスベイから出るのは慣れていない初任運転士には厄介なのだ。バスが右ウインカーを出したら自転車や特定小型原付や原付はご自身のためにも追い越そうとは思わないでいただきたい。だいたい死角に入っているので危険極まりない。
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