金額が切り替わるタイミングっていつ? 上昇型バス運賃の知られざるヒミツ

「場合による」のカタマリ!

 運賃の計算方法は大体分かったとして、次に金額が切り替わるタイミングがいつ・どこなのかを、目安くらいは踏まえておきたいものだ。

 国土交通省の資料によると、切り替えの場所にも、ある程度の決まりが設けられているようだ。タクシーのような初乗りを過ぎると200数十メートルごとに課金といった、距離単位による区切りではなく、バスは停留所単位とするのが原則となっている。

 不公平感や利用者に負担がかからないよう、運賃を段階的に少額ずつ上げていくことになるが、この切り替わりポイントに設定された停留所のことを「区界停留所」と呼び、区界停留所と区界停留所の間を1km以上離すよう定めている。

 とはいえ実際のところ、需要や自治体との擦り合わせなど、その地域の環境に応じて停留所の位置が決まってくるため、区界同士が1kmを切る場所がある反面、2km以上離れた区間だって多々ある。

 一定の決まりがあると言えど、日本全国どこの停留所も、そこに置かれる厳密な条件は「場合による」のだ。

運賃が上がっていく路線バスに乗る際、欠かせないのが整理券だ。整理券発行機は主に入口の脇あたりに設置されている。
運賃が上がっていく路線バスに乗る際、欠かせないのが整理券だ。整理券発行機は主に入口の脇あたりに設置されている。

東京、長崎、奈良・和歌山で紐解く!? 上昇型バス運賃

 運賃を決める各種お約束事に続いて、参考までに実在する3箇所のバス路線を例に、運賃にまつわるスペックを、始点から終点まで乗り通した場合を想定して見てみよう。

(A)都営バス 梅70系統

・区間:青梅車庫〜花小金井駅北口
・距離:約29km
・所要時間:1時間31分
・停留所の数:80箇所
・運賃:180〜570円
・運賃が変わる回数:16回
・上がる運賃の単位:10、20、30、50円

【乗りバスレポはコチラ!】

 東京都内で最長距離を走る路線バス。初乗り180円から最大570円になる。

 区界〜区界の距離が最も長いのは三ツ橋〜東大和市役所入口間の約3.5kmで30円アップ。1.4km走って50円上がる区間や、800mで+10円、1.5kmでも+10円と、金額と距離は必ず比例するわけでもなさそうだ。平均すると約1.8kmおきが運賃の上がるタイミングだ。

(B)さいかい交通 大瀬戸・板の浦方面

・区間:長崎新地ターミナル〜板の浦
・距離:約46km
・所要時間:1時間39分
・停留所の数:88箇所
・運賃:160〜1,160円
・運賃が変わる回数:42回
・上がる運賃の単位:10、20、30、40、60円

 炭鉱跡と無人アパート群(それと猫ちゃん)が見どころになっている池島へのアクセスに便利な路線。それなりに距離が長いため、最後まで乗車すると運賃が千円の大台に乗る。

 長崎新地ターミナルから市街地の区間3kmほどは初乗り運賃で据え置き、郊外に出るとコンスタントに上がっていく印象だ。

 区界〜区界の最短が約300m+10円と+20円の2区間、最長が長崎魚市場〜東上間の約2.6kmで+30円。前述の都営バスと同様、金額と距離はあまり比例しない。切り替わりの平均は約1kmおきだ。

(C)奈良交通 八木新宮線

・区間:大和八木駅(南)〜新宮駅
・距離:約170km
・所要時間:6時間32分
・停留所の数:168箇所
・運賃:190〜5,350円
・運賃が変わる回数:77回
・上がる運賃の単位:10、30、40、50、60、70、80、90、100、150、300、500円

 今や超有名な、日本国内最長距離を誇る路線バス。始点から終点まで乗り通すと5千円以上に達する、路線バス運賃界の帝王だ。

 最初の2kmを超えると運賃が上がり始めるが、50円単位が52区間と最も多い。1区間で300円、500円と一気に上がる箇所は走行距離の長い無停車区間となっており、前者が高津橋〜宮井大橋間の約7km、後者は神丸〜新宮高校前間で17kmにも及ぶ。

 この2区間を除けば、こちらも金額と距離はあまり比例しない。ほか区界同士の距離が3km以上離れる区間の特徴としては、峠道や人気の少ないエリアなどが挙げられる。切り替わりの平均は約2kmおきだ。

 国が基準を定めていても、決して教科書通りには行かず、確たる答えも存在しない。単純そうに見えて、実は物凄く奥が深い世界・それが上昇型路線バス運賃なのである。

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