■つかみは最高
こういうクルマを見られただけでも嬉しい中、バスのドアが開くとまた通常の路線バスとは全然違う世界線が用意されていた。
たまたま当たった担当の運転手さんがまたユニーク。ごく当たり前の事務的な「お待たせいたしました」ではなく、「おう兄ちゃん待たしたな、乗んな!!」くらいのノリで迎えてくれた。観光で来てるんだし、そういうの全然アリだしむしろ好きよ。
やんばる急行の一般路線バスは1路線しかないため、バス車両前面の行先表示器は完全固定。行き先をプリントアウトした紙(?)を裏側から貼り付けた、学園祭のような手作り感があるところもまた、沖縄という緩やかな空気感も手伝って親しみがわいた。
前面の行先表示器の脇に「中乗り」の表記があるのだが、これは千葉内陸バス時代の名残で、YKB-4T系統では中扉は締切にして、前乗り・前降り方式が採られている。
沖縄を走る他のバスにも一部で見られる、乗る際にどこで降りるか行き先を伝えるシステム。古宇利島まで行く旨を伝えると「それならフリー切符買ったほうが安いね」と、1日乗車券を薦めてくれた。値段は1,000円。
当日の運転手さん、途中で乗車してきた他のお客さんにも同様の対応をしていたほか、「次のバスだとこの時間だね」とか、「ここで降りて沖縄バス乗るならこっちの道通ると近いよ」とか、カラっとした雰囲気を保ちつつ物凄くキメの細かいサービスをやってくれていて、こちらも爽快な気分になれた。
■平均的なローカル路線バス、と思いきや!?
バスは美ら海水族館の前や、今帰仁城跡に寄り道しつつ順調に進んでいく。半島の突端部分に敷かれている道路はやや内陸寄りで、それに伴って車窓からの景色は草木系と人工物が中心になる。
そんな風景が続き、景色の面では平均的なローカル路線バスかな? などと思っていた。ところが経路の終盤に差し掛かり周囲が開け、屋我地島・古宇利島のシルエットが見えくると考えが変わり始めた。
屋我地島と古宇利島には、長さ約2kmの古宇利大橋が架かっている。遠目から見ても「立派な橋だな〜」と感心を抱かせるが、このバスの行先は古宇利島なワケで、後でその橋を必ず通るということだ。
古宇利大橋が掛かる周囲は浅瀬で、沖縄の海でしか見られないような、Photoshopで彩度を持ち上げなくても全然鮮やかなエメラルドグリーンが欄干ごしに広がる、最高峰のオーシャンビューが出現!
こんな場所を走るバスは日本全国探してもそうそう見つからないかも!? バスが大橋を通過している間に、それまでの車窓から見えていた景色の平均的な印象が全部吹っ飛んだ。終わりよければすべてよし、とはこのことか。
オキナワの海の青さを持ち出すのは反則に近いものを感じるとはいえ、YKB-4T系統は国内屈指の絶景路線バスであるのは間違いない!!!
■プチ1周して楽しめます
橋を通り抜けて古宇利島に上陸すると、ちょっとしたオマケがついてくる。このバス、古宇利島の公共交通役を兼ねていて、外周に敷かれた道を1周してくれる。
本部半島エリアには周回型の沖縄バス/琉球バス65・66番もある。グルっと1周回るバス路線が複数用意されている場所というのも、中々どうして珍しい気がする。
古宇利島は1周およそ5kmの小さな島で、バスは時刻表ベースで15分ほどかけて回る。なお地図上で経路に線を引くとホタテ貝みたいな輪郭を描き、牡蠣の殻状をした山手線よりだいぶ円い。
本部博物館前を9:40に出発、今帰仁城跡を経由しつつ橋を渡り屋我地島→古宇利島に入り、古宇利島の駅ソラハシに一旦立ち寄ってから古宇利島を1周したのち、10:55に再度古宇利島の駅ソラハシに戻ってきて終点となった。
今や希少になったバス車両をはじめ、(時と場合によるかもしれないけれど)フレンドリーな接客サービスと、最後に現れる反則級の絶景区間等々。
やんばる急行YKB-4T系統は他のバスではあまり体験できない、ただの移動手段に留まらず珍妙ながらも小気味良い、オキナワのオイシイところが詰まった路線バスであった。
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