■本数が劇的に増えました
2012年のデビューから10年以上を経て、今日も変わらず気仙沼線BRTは元気に運行を続けている。2025年5月の時点で、1日あたり気仙沼方面への下りが14+1(本吉止まり)本、前谷地方面の上りが14+1(本吉始発)本のダイヤ設定。
利用者が多い途中の本吉〜気仙沼間では下り33本・上り30本と便数がかなり増える。全区間が鉄道線だった時代のダイヤと比較した場合、1.5〜3倍程度に増便されている感覚だ。
車両に注目すると、ごく一般的な全長10.5mクラスの大型路線車が使われている。運行開始当初はいすゞキュービックや旧世代の日野ブルーリボン等、通常のディーゼル車での運転だった。
最近はもっぱらハイブリッドが主流で、日野ブルーリボン系と、いすゞエルガの各ハイブリッド車に赤系の専用カラーを施して活躍している。
ちなみに2023年度の気仙沼線BRTの平均通過人員は1日あたり207人。それに対して定員80名クラスの大型路線車が使われているのは、BRTには輸送力の確保という条件を満たす必要があり、実際の輸送量に対して、車両の輸送力に余裕を持たせておく通例に則っているため、と思われる。
■独特な乗り味
下りの気仙沼線BRTを例にすると、鉄道区間が継続している前谷地駅始発と、現在の鉄道線の終端になっている柳津駅始発の2パターンから選べる。
鉄道で柳津まで来ても、少し長めのトイレ休憩ができるくらいの待ち時間で、列車→BRTへの乗り継ぎができるダイヤが組まれていて、そこはしっかりとBRTの条件を満たしているので安心。
最大の特徴はやはり鉄道インフラを利用したBRT専用道路。柳津〜気仙沼間55.3kmのうち、40km以上の距離を専用区間が占めており、一般道とはまた違う狭隘感に包まれた道筋を抜群の安定感で進む、巡航時間が極めて長い独特な乗り味が楽しい。
内陸部にある柳津を出ると海岸線に向かって進む経路で、車窓は海/山系のハイブリッド。元々線路だった場所を走るせいか、景色の見え方はバスというより列車に乗っている時のような感覚に近い。
■ホームから乗って、ホームで降りる
一般道を走る区間を除き、気仙沼線BRTには赤い駅名標が目印の、プラットホームと上屋の付いた専用乗り場が駅構内(のあった所)に作られている。見た目では駅というよりも路面電車の電停に似ているかも。
ともあれ、柳津→気仙沼間で利用する場合、ホームから乗ってホームで降りるお作法は電車にそっくりで、路線バスながらも電車のような乗降フィーリングを持っているところも気仙沼線BRTのユニークな点だ。
利用方法自体は後ろ(中)乗り・前降りの運賃後払い方式。気仙沼線の鉄道区間とは切り離されており運賃は別々。紙の切符を買って乗る鉄道区間に対してBRTはSuicaが使える。
柳津→気仙沼間の所要時間は1時間48分。鉄道時代の普通列車が1時間30分前後で結んでいたので、やや時間がかかるようになった。
しかしここは、鉄道車両に比べればどうしても足が遅くなる路線バス車両を使用する限り、ありのままと見るべきところ。運賃は1,170円。
気仙沼から先の大船渡線への乗り継ぎに関しては、乗ってきたバスによって1分〜1時間待ちくらいと、だいぶ“まちまち”ながら、夜の便以外は大体繋がるようになっている。
本数がそれなりに出ていて、使い勝手はなかなかどうして悪くない。バスと列車の中間のような専用区間での走行体験は非常にユニーク。
見た目は路線バスながらも、その辺には中々ない乗り物であるのは確かで、JR気仙沼線BRTは試してみる価値の大きな魅力を感じる公共交通機関だ。
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