普通のバスとどこが違う?「東京BRT」の運行方法が特殊すぎる!!

普通のバスとどこが違う?「東京BRT」の運行方法が特殊すぎる!!

 最近よく耳にする「BRT」。見た目は路線バスとほぼ同じながら、どこかに大きな違いはあるだろうか。東京BRTを例に探ってみよう。

文・写真:中山修一
(現地取材時の写真付き記事はバスマガジンWEBまたはベストカーWEBでご覧ください)

■2020年デビュー!! ウォーターフロントを走る東京BRT

虎ノ門ヒルズBRT乗り場に入ってきたトヨタSORA
虎ノ門ヒルズBRT乗り場に入ってきたトヨタSORA

 BRTとは「Bus Rapid Transit(バス・ラピッド・トランジット)」を略したもので、漢字カタカナ書きでは「バス高速輸送システム」のように表現する。

 最近はBRTと名のつく乗り物が全国各地で走るようになってきた。その中の一つ「東京BRT」は、東京の都心部・港区と、埋立地をルーツに持つ臨海エリアの、豊洲や有明を結ぶ新しい交通手段として、2020年10月にデビューした。

 2024年3月現在、途中の停留所止まりの便などを除いた“主要”路線は3つ。虎ノ門ヒルズ〜新橋〜豊洲ルート、新橋〜国際展示場(土日祝のみ東京テレポート行きあり)幹線ルートのほか、2024年2月から新橋〜HARUMI FLAG選手村ルートの運行が開始された。

 選手村ルートは、元々2020年東京オリンピックの選手村だった場所が終点で、現在はマンションを中心とした住宅地「HARUMI FLAG」として再開発が進んでいる。

■普通か否か!? BRTの車両ラインナップ

 では、東京BRTと普通の路線バスに違いはあるのか、手始めに使用されているバス車両の車種をチェックしてみると……

……一般的な大型路線車(いすゞエルガシリーズ)、ハイブリッド連接バス(いすゞエルガデュオ)、燃料電池車(トヨタSORA)の基本3種類がラインナップされている。

 いずれの車両も一般的なバス路線で使用されているため、車種選択に関しては割と普通だ。ただし、東京BRTの各路線を利用してみると、トヨタSORAがかなり目立つ。

虎ノ門ヒルズ発のほとんどの便は、ミチノテラス豊洲が終点になる
虎ノ門ヒルズ発のほとんどの便は、ミチノテラス豊洲が終点になる

 今のところ、少なくとも13台ほどのSORAが導入されているようだ。都営バスを除き、現時点でSORAを10台単位で運用している事業者は大変珍しく、燃料電池車の積極活用=東京BRTの特徴の一つに数えて良さそうだ。

■ラピッドの秘密はやっぱりコレ?

 次に、公式サイトで東京BRTの路線図を見てみると、停車ポイント(停留所)の数があまり描かれていないのに気付く。

 はじめのうちは、途中の停留所を省略しているのかな? と思ったのだが、なんと停車ポイントは本当に、路線図に描かれている数しかないのだ。始発/終点を含めた停車ポイントの数と走行距離を路線ごとに記すと……

・選手村ルート 新橋〜HARUMI FLAG(3.8km):4箇所
・虎ノ門ヒルズ〜ミチノテラス豊洲ルート(7.95km):7箇所
・新橋〜国際展示場 基幹ルート(5.35km):5箇所

……やはり距離に対して停まる場所がかなり少ない印象を受ける。これは通常の路線バスと大きく異なる点だ。

■ほんとに速いの?

東京BRTの連接バス。いつ連接が来るかは時刻表を見ると分かる
東京BRTの連接バス。いつ連接が来るかは時刻表を見ると分かる

 他と比べた場合、東京BRTは“速い”のだろうか? 東京BRTと競合関係にある主な公共交通機関に、都営バス市01系統と、「ゆりかもめ」がある。それぞれの全区間の平均速度を計算して速い順に並べると、以下のようになった。

(1)ゆりかもめ 新橋〜豊洲:28.4km/h
(2)東京BRT 新橋〜HARUMI FLAG:19km/h
(3)東京BRT 新橋〜国際展示場:18.9km/h
(4)市01系統 新橋駅前〜豊洲市場:14.4km/h
(5)東京BRT 虎ノ門ヒルズ〜ミチノテラス豊洲:13.6km/h

 「ゆりかもめ」はゴムタイヤで走るからと、同じ土俵に立たせてしまったが、さすがに専用線を走るだけあって、スピードだけなら勝負にならないほど速かった。

 一方で東京BRTの虎ノ門ヒルズ〜ミチノテラス豊洲ルートが最も遅い結果に。しかしこれは回り道をする経路の関係で、右左折と信号待ちで停まる箇所が増えるため、どうしても速度を稼げないのだろう。

 直行に近い形で走る、HARUMI FLAG選手村ルートと国際展示場幹線ルートは平均19km/hくらい出ており、東京都区内を走るバスとしては結構速い。

次ページは : ■ショートカットルートが強み?

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