バスの運転士不足問題は仮に入社してくれても今度は基礎教育が難しところまで深刻化している。少しでも事業者の負担を減らして新人運転士を育成しようと立ち上がった自動車学校を取材した。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
取材協力:信州駒ケ根自動車学校
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■入社しても教育できないジレンマ
バスの運転士不足問題は、すでに社会問題化していてバスの減便や路線廃止が現実のものとなっている。解決策として最も重要なのは待遇改善であることは言うまでもないが、今回そこはひとまず置いておいて、入社する運転士の卵は確実に存在するが、せっかく入社しても教育ができない現状にある。
入社して免許を取得しても、すぐに運転士として乗務ができるわけではない。教習所で教わったことは実はものすごく重要なことなのだが、営業で使いこなせるかどうかは別だ。これは試験場で取得しようが教習上で取得しようが同じで、慣れとセンスの問題である。
ワンマンバスの運転士はバス停に付け、乗客の対応をし、放送をし、運賃を収受しと、やることが多すぎる。そのため、ただバスを動かせるだけでは運転士としてデビューはできない。これまでは各事業者で基礎訓練を行い、乗客対応を学び、実際の路線教習を経て巣立ちするのが当たり前だった。
しかし一人の運転士の卵を教育するには、まずは教育するためのバスが必要だが、これはいくらでもあるので問題はない。しかし一人の運転士教育に付き一人の指導する立場の教官的人材が一人が必ず必要になる。運転を自習というわけにはいかないのだ。
■教育するより乗務優先の実際
しかしながら運転士不足により、教育係の運転士は乗務しなければダイヤが回せないところまで運転士不足は深刻になっている。よって、せっかく入社してくれても基礎教育をする立場の人材の時間が取れないという問題に直面している。
また大手のバス会社では路線バスの他に高速バスや貸切バスも運行しており、運転士が路線バスから高速バスに乗務変更になるのを躊躇する事例が多く、そのための習熟訓練も必要になるのだ。これは路線バスの11m車と高速バスの12m車という、たった1mの違いから来るものだが、この1mの差が大きいのは後に知ることになる。
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