協調性に欠けている!? 神奈川県バス事業者の方向幕は系統番号に統一感がない!!

協調性に欠けている!? 神奈川県バス事業者の方向幕は系統番号に統一感がない!!

 神奈川県を走るバス事業者の方向幕は「深夜バスのコマは緑ベタを採用する事業者が多い」ことと「系統番号が事業者によってバラバラ」という特徴がある。系統番号に統一感がない地域は極めて珍しい事例である。

 そんな神奈川県内のバス事業者の方向幕を見ていこう。

(記事の内容は、2020年11月現在のものです)
執筆・写真/高木純一
※2020年11月発売《バスマガジンvol.104》『方向幕の世界』より

【画像ギャラリー】良く言えば自由!! 事業者によって系統番号がバラバラという神奈川県の個性派方向幕!!(15枚)画像ギャラリー

■神奈川県を走るバス事業者10社の方向幕

●横浜市交通局

横浜市営バスの方向幕は昔から「回送車」表示にローマ字は付かない。また側面幕だけ別動で矢印と系統番号が赤色で書かれる
横浜市営バスの方向幕は昔から「回送車」表示にローマ字は付かない。また側面幕だけ別動で矢印と系統番号が赤色で書かれる

 神奈川県を代表する公営交通である横浜市交通局の方向幕は、何といっても系統番号に漢字が付かないことが特徴。これは首都圏内の大手事業者では唯一の存在であり、同局の方向幕においても最大の特徴である。

 また関東地区ではあまり見かけない3桁の系統番号(101や305など)が存在する。カラー幕は深夜バスの緑ベタコマ以外は無かったが、ベイサイドエリアを走る新路線に初めてカラー幕が出現した。

 他社とは異なり、系統番号ではなく行先の色を変えることで行先違いを表現する、あまり例のない色分けの仕方をしている。

 方向幕搭載車は今でも観光路線「あかいくつ」用車両で使用しており、LED化工事を在来車にはしなかったため最近まで一般車で幕車が残っていた。オージ製の表示機を使用しており、U-車までは穴検知式であったがKC-車以降は箔検知式に変更された。

 また、緑営業所所属のU-車初期までは前面と後面幕は系統番号分割式を継承していた。後面幕は1200mmサイズの細長い幕になっているが、ノンステップバスの後面幕はなぜか長さが約半分の650mmに変更された。

 一般路線車は側面幕が相互表示のため、前面と後面が連動、側面別動の方式が採用されていた。ローマ字併記はU-車あたりの車両から付きだし、後面幕にはローマ字が付かない。

●川崎市交通局

川崎市営バスはほぼ青インクのみの構成であり、側面幕の経由地書きではオレンジ色を使い、黒インクは使われていない
川崎市営バスはほぼ青インクのみの構成であり、側面幕の経由地書きではオレンジ色を使い、黒インクは使われていない

 神奈川県第2の都市、川崎市営バスの方向幕は青インクのみの構成で、深夜バスや特殊系統、経由地書き以外はすべてが青文字だ。お隣の横浜市営バスとは異なり、関東らしい漢字付きの系統番号を採用する。

 同局の方向幕には裏側に大きくコマ番号が印字される。経由地書きと同じオレンジ色を採用しているためかなり目立つ。また工業地帯方面には急行やほぼ無停車の特急の設定がある。中には「直行東扇島循環」という一見したら循環なのに直行ってどういうこと? と考えてしまうような表示もある。

 ベタ印刷のコマは一切なく、局名表示は「川崎市バス」となっている。市営と書かれない表示はかなり珍しい。オージ製の表示機を採用するが以前より箔検知式を採用している。横浜市営バス同様、前面後面が連動、側面のみ別動式を採用している。深夜バスは黄緑色の緑ベタを採用している。

●川崎鶴見臨港バス

臨港バスで白い行先のコマはP-時代以前しかなかったが、幕末期の頃にローマ字入りで復活した。写真の川29系統のみ行先が白い
臨港バスで白い行先のコマはP-時代以前しかなかったが、幕末期の頃にローマ字入りで復活した。写真の川29系統のみ行先が白い

 川崎市と横浜市の隣接する地域を走る、京急グループの川崎鶴見臨港バス(通称、臨港バス)の方向幕は系統番号部分は白地に青文字だが、前面・後面幕の行先部分は黒ベタになっている。

 P-初期車までは行先部分も白地であった。系統番号は横浜市内路線であっても川崎市バスと規則性を合わせた漢字+数字を採用している。

 同社のローマ字併記は独特で、回送は「SEND BACK」、貸切は「RESERVED」と表示されれる。鶴見営業所管内の幹線系統のみ、系統ごとに系統番号がベタ印刷されていた。

 また工業地帯路線は川崎市営バスとの競合系統が多く、急行便設定もある。深夜バスコマは緑ベタを使用し、一部では月の絵が描かれており、企業輸送コマにも挿絵があったりする。

 臨港バスもコマ番号を裏側に大きく印刷しているが、川崎市バスとは違いこちらは黒文字。オージ製表示機を採用するが、お隣の川崎市営に合わせてか箔検知式である。幕は3点連動式で九州地方のメーカーの幕を採用していた。

●相鉄バス

 横浜市の北西部に路線網を持つ相鉄バスの方向幕は、ローマ字併記の幕は最後まで無く、ほとんどを黒文字で構成している。経由地書きのみ青文字で書かれている。

 系統番号の付け方は同社独自で、営業所を表す漢字と管内単位での数字で構成される(例/浜19、旭25など)が、横浜市営バスとの共管路線のみ横浜市営の系統番号に合わせている。

 側面幕は最後まで並みサイズであり、標準より幕幅が小さい。前面・後面幕が連動、側面幕のみ別動式であった。神奈川県内では唯一であるレシップ製バーコード式表示機を採用し、停名表示機との集中操作式である。幕は営業所によって関西地方と中部地方のメーカーのを使い分けていた。深夜バスは緑ベタだ。

●江ノ電バスグループ

 江ノ島・湘南エリアを営業範囲とする江ノ電バスグループは、方向幕の変化が著しい。モノコック車時代は前面経由幕が付いた分割式であったが、富士重工5E車体になるのと同時に幕が大型化され、さらに黒幕化もされた。

 その中でも藤沢営業所所属車のみ、幕の大型化後も前面経由幕分割式のままとされ、手動式の経由幕が搭載されていた。しかしそれも長くは続かず、U-車末期より全車が前面幕一体式に改まった。

 側面幕も大型化と同時に黒幕となり、関東圏で全方向黒ベタ幕になっているのは事業者単位ではここと伊豆箱根鉄道バスだけである。

 KC-車あたりからは3面連動式となったが、以前は側面幕のみ目視による単動式であった。ローマ字併記は観光地を走るごく一部の路線のみであり、系統番号も他社共管路線のみにしか付けられていなかった。

 社名表示は以前は車体表記と同じ書体を使っていたが、KC-車あたりからほかのコマの書体で「江ノ島電鉄」と表記される。深夜バスの黒ベタのままなのは神奈中バスと同じ。オージ製穴検知式表示機を採用し、幕は関西地方のメーカーのものを採用する。

●神奈川中央交通

神奈中バスの方向幕は前後が黒幕で側面が白幕。しかも最後まで並み(小型)サイズだった。200コマ以上入っているのは神奈中だけ
神奈中バスの方向幕は前後が黒幕で側面が白幕。しかも最後まで並み(小型)サイズだった。200コマ以上入っているのは神奈中だけ

 以前、本誌99号にてご紹介しているため詳細は省かせていただくが、神奈川中央交通バス(通称・神奈中バス)の方向幕は早い段階で黒ベタ幕を採用した事業者である。

 神奈中バスの方向幕といえば、何といってもバス1台に搭載されている幕のコマ数が日本一であることが特徴。おおよそ200コマ近い段数の幕を装備している。

 系統番号は神奈中独自の基準で付けられているが、横浜市営バスとの共管路線は横浜市営に合わせた数字のみの系統番号になる。側面幕は以前より並みサイズのまま白幕で、前面・後面が連動、側面幕のみ別動であり、停名表示機との集中操作式を採用している。

 また関東圏では珍しい交通電業社(通称Parasign)式表示機を採用している。

●京浜急行バス

 こちらも本誌82号の東京都特集の際にご紹介しているので、詳細はそちらも参照していただきたい。いすゞ車のみオージ式を採用し、ほかの3メーカーは羽深式の表示機を採用している事業者である。

 側面幕はP-車の頃よりワイド幕を採用していたが、ワンステップバスは当初は標準サイズで導入したため、ワイド幕から標準サイズへ時代が逆行した時期があった。

 江ノ電バス同様、側面幕のみ目視による単動式であったが、新製幕車末期まで単動式が続いていた。前面・後面幕も1コマずつ進段させる目押し式であった。

●東急バス

 同じく82号の東京都特集で触れさせていただいたが、神奈川県下の東急バスの方向幕は川崎市内路線以外は系統番号が付いていなかった。ローマ字併記もわりと遅く、前面幕のローマ字が付き始めたときに系統番号の設定がされたが、ほどなくしてLED化されてしまった経緯がある。

 いすゞ車のみ羽深式、そのほかの3メーカー車はオージ式を採用するという、京急バスとは全く逆のパターンで表示機を搭載させていた。

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