プリウスより先にデビュー!! ハイブリッドはバスのほうがパイオニアだったってマジか

普及は別問題?

 電動モーターは出だしから最大の力を掛けられる特性を持つため、細かに発進停止を繰り返す路線バスとの相性が良い。

 燃費上々でエコにも一役買っているハイブリッド方式は、路線バスにとって理に適ったシステムと言えるが、それだけ全国に普及していると考えてOKだろうか?

 日本バス協会が発行する近年のデータによれば、全国に導入されている乗合バスの数は全部で61,542台(2019年現在)ある。

 普通乗用車のハイブリッドがあれだけ普及しているのだから、バスもこの半数くらいなのではと思いきや、驚いたことにハイブリッドは路線車1,238台、高速車27台、貸切その他51台合わせて1,316台(2021年現在)しかないのだ。

 ハイブリッドの路線車が多い都道府県を順に並べると東京都(310台)、神奈川県(263台)、京都府(78台)、兵庫県(72台)、北海道・千葉県(各69台)と続く。0台の県も多数だ。

 なぜそこまでハイブリッドバスは少ないのか…考えられる理由が2〜3あるうち、特に壁となっているのは車両本体価格だろう。通常のディーゼル車の大型バスが2,500万円くらいに対してハイブリッドは3,000万円程度と、結構な開きがあるのだ。

 路線バスの場合1台買えばそれで終わりというわけではなく、複数台を用意する必要があるため、1台あたり数百万円の開きがあるとハイブリッドの導入優先度はどうしても下がってしまう。

 導入後の整備もまた問題となる。ディーゼル車とハイブリッド車とで保守のための環境を二つ作ることになり、ディーゼル車のみを扱う場合に比べると手間やコストが多くかかる。

 実際ハイブリッド車を運用しているバス事業者の例を見てみると、全ての営業所にまんべんなくハイブリッド車を割り当てているのではなく、まとまった数を特定の営業所に絞って投入する傾向が極めて強い。

京急バスのハイブリッド車。屋根上の前のコブは電池収納スペースだ
京急バスのハイブリッド車。屋根上の前のコブは電池収納スペースだ

 バッテリーの交換費用が高額であるのもハイブリッド車の弱点であり、そこまで考慮するとディーゼル車のほうが割安になると思われる。

 さらに、技術の進歩で普通のディーゼル車もかなりエコになってきており、現行車種ではディーゼル/ハイブリッドどちらも同じ燃費基準と排出ガス規制をクリアしている。

 過去には助成金を利用して複数のハイブリッドバスを導入した事業者もあったが、老朽化などにより引退が進み、多くの場合は普通のディーゼル車に置き換わっている。

 走行システムが路線バスの運行上の性質と合っていて、環境にも配慮できる点でハイブリッドバスの有効性は大きいものの、コストの面が最大のネックと言える。

 今後は電動モーターとバッテリーのみで走行可能なEVバスもどんどん登場してくるはずで、ちょうどエンジン車と電気自動車の中間にいるハイブリッドバスの行く末が気になるところだ。

【画像ギャラリー】低燃費とエコが自慢!バスのハイブリッド車(12枚)画像ギャラリー

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