■「愛される路線」に必須の条件
昨秋以来コロナの感染が落ち着き、満席便も増えてきた。すると会議で「要員不足で続行便を出せない」という発言が聞こえる。
しかし、その担当者に過去のデータを調べてもらうと、当の本人が驚いている。「わずか数年前、ウチの会社、こんなに台数を出してたんですね」
国全体で生産年齢人口が急減する中、バス業界も要員が不足することは予測されたことだ。
だからこそ、2012年スタートの「新高速乗合バス」で二つの制度が採用された。需要に応じ運賃額を変動させ需要平準化を図る「幅運賃」と、繁忙日に貸切バス事業者が高速バスの続行便を運行する「貸切バス型管理の受委託」である。
とりわけ、高速バスの需要が集中する年末年始は、貸切バスは低稼働だ。応援体制を組めれば、双方に大きなメリットがある。
高速ツアーバスからの移行事業者は、両制度を活用している。だが既存事業者は、西日本ジェイアールバスなど数社を除き、未だ消極的だ。「高速ツアーバスは自由度が高く不公平だ」とあなた方が叫んだから、既存事業者も柔軟な運用ができるように制度を改正したのではなかったか?
「満席お断り」をビジネス用語で説明すると「機会損失」という無機質な響きになる。しかし断られたのは、1人ひとりの人間であり「お客様」である。いつ行っても品切れ、というお店に次回も行くだろうか。
続行便不足は、「売上ロスがもったいない」ではなく「お客様に失礼」と捉えるべき問題だ。需要が集中する曜日、時刻に適切に在庫を用意することは、長く愛される路線作りに必須の条件である。
制度改正から今年で10年。あらためて「貸切バス型管理の受委託」を積極的に活用し需要波動の壁を乗り越えてほしい。
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