どんな質問にも答えてくれると話題の生成AIに、路線バスの写真を食わせて車種を特定してもらうと、情報の正確性はともかくとして一応答えが返ってくる。そんなAIにも、バスの種類によっては、通常よりも細かいところまで知ってるよ、と匂わせる、何とも人間臭いところがあるようだ。
解説・写真:中山修一
回答してくれたAI:ChatGPTさん
(バスマガジンWeb/ベストカーWebギャラリー内に、AIさんに投げたお題のバス写真+αがあります)
■4枚目だけ違った
生成AIのChatGPTに、それぞれ異なるバス事業者で使われている各種バスの写真を、3枚ほど食わせて鑑定してもらった。
その結果は別記事で紹介しているのでそちらを参照願いたいが、今回は4枚目に食わせた1枚がテーマ。他のものと少し回答結果が異なっていたためだ。どんな回答が来たかといえば……
【AI回答】
このバスは、西日本鉄道(西鉄)が運行する路線バスで、車体の形状やデザインから見て、日産ディーゼル(現・UDトラックス)製の「スペースランナーRA」である可能性が高いです。
以下の特徴から判断しています:
・前面の形状とヘッドライト配置
・フロントガラスの湾曲の仕方
・側面の車体形状と車椅子マークの位置
・車両番号「9013」と西鉄の塗装デザイン
西鉄バスでは、日産ディーゼル製の車両を多く採用しており、特に2000年代に導入された「スペースランナーRA」はこのような外観です。
ご希望であれば、製造年や詳細仕様も推定できます。
【AI回答おわり】
……といった感じだ。
お題写真に写っているのは、福岡県の西鉄バス北九州で使われている大型路線車で、日産ディーゼル製なのも概ねAIの回答通り。4枚折り戸の中扉を持つワンステップ仕様車だ。
概要はともかくとして、他の3枚のバス車両の写真と異なっていたのが、詳細まで答えられるよ、と、向こうから追加情報のオファーをしてきた点。
どうやらこのお題に関しては別格で、相当な自信があるとみた。AIさんは西鉄バスがお好きなのかしら?
■AI流・大型路線車プロファイル診断
せっかくなので、より掘り下げたレベルまで情報を出してもらうよう、AIさんに頼んでみた。回答は以下の通り。
【AI回答】
バスの外観とナンバープレート「福岡 200 か 211」と車両番号「9013」から、この車両は西日本鉄道(西鉄バス)が保有していた 日産ディーゼル スペースランナーRA(型式:PKG-RA274KAN)である可能性が非常に高いです。以下に代表的な仕様を示します。
●車両仕様(推定)
・メーカー:日産ディーゼル(現・UDトラックス)
・車種名:スペースランナーRA
・型式:PKG-RA274KAN
・導入年度:2008年(車両番号「9013」から西鉄の2009年度導入車と推定)
・車体製造会社:西日本車体工業(西工)製の96MC(B-II型)
●主なスペック
・全長:10.5〜11.2m
・車幅:2.5m
・全高:約3.0m
・ホイールベース:5.3m前後
・エンジン型式:MD92TJ(6気筒ディーゼルターボ)
・排気量:9.2L
・出力:260PS程度
・トランスミッション:5速または6速MT(または自動クラッチ式)
・乗車定員:70名前後(座席+立席)
【AI回答おわり】
■ホントに合ってる?
さて、それらしく答えるのはAIが最も得意とするところであるが、どんな問いでも常に100%の確率で正しい答えを割り出すワケではないのが、現状のAIの課題であり問題でもある。
お題のバス車両が、下回り(シャシー)と車体を別々のメーカーで製造していたモデルだと、AIさんは見抜いたようだ。それは合っているけれど……ではこの回答をそのまま信じてOKなのか、答え合わせしてみよう。
●実際の車両仕様
・メーカー:日産ディーゼル(現・UDトラックス)
・◆車種名:UA(スペースランナー系)
・◆型式:KL-UA452MAN
・◆年式:2004年
・車体製造会社:西日本車体工業(西工)製の96MC(B-II型)
●実際の同型車種の主なスペック
・△全長:約10.8m
・△車幅:約2.5m
・△全高:約3m
・△ホイールベース:5.3m
・◆エンジン型式:PF6HTAもしくはPF6HTB(6気筒ディーゼルターボ)
・◆排気量:12.5L
・◆出力:240/300PS
・△トランスミッション:5速MT(6速MTもなくはない模様・AIが記した自動クラッチ式が何を指していたのかは今ひとつ不明)
・乗車定員:70名前後(座席+立席)
※「◆」は、AIが誤回答したため修正を行った項目
※「△」は、AIの回答に対して追加変更等が必要だった項目
細かいところまで解説してくれたAIさんの回答と、実際のスペックとの間に、だいぶ差異が生じていた。14項目中11項目に何かしらの書き換えが必要となり、これじゃあコピペで済ませるのは到底無理という話だ。
バスを判別する際に最も重要な項目となる、「車種名・年式・型式」がハズレだった時点で、打った杭から総崩れと言えるけれど。車体のメーカーとタイプは合っていたのにね。
一方で「約」や「前後」、「推定」を添えて大まかに表現することは、バスを楽しむにあたってごく普通にやるので、基礎さえ押さえてあれば特段問題ない。
とはいえ上記のAI回答には、本来「塩」が正解なのに、もっともらしく「砂糖の可能性が高いです」と言っているような項目がポツポツあり、そこが要注意だ。これぞ半ばゴリ押すAI流鑑定術というやつか!?
現状では、概要しか答えなくても掘り下げられるとしても、出てくる情報の精度は変わらない(ホラ吹いてる)印象。
AIさんから自信ありげに「この車詳しいですよ!!」のような詳細鑑定のオファーを受けても、ここはそっとノーサンキューと言っておくのが無難らしい。今後結果が劇的に変わるかもしれないので、またしばらく経ってから車種鑑定やってもらうか。
【画像ギャラリー】AIさんも知っている(?)日産ディーゼル+西工車体の大型路線車(5枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方