ついでに乗せてくれないかなあ……
「車庫へ帰るついでに乗せてくれればいいのに」。今になって始まったことではなく古くから言われ続け、利用者側の意見要望願望を振り切って妄想と脅しの領域にまで化けてしまったホラーな常套句である。
回送を営業路線へと変身させるには、まず乗務員の労働時間をはじめ路線新設の届出など、法律との兼ね合いが大きなトピックとなる。
次に、営業路線化すると回送なら確保できていた時間的なバッファーがなくなり、遅延が起こりやすくなる可能性も生じる。
そして何より、実現例をあまり聞かないということは、そもそも儲からないか、結局のところ効率が極端に悪くなると予想される。
回送バスが回送バスのままなのは、それが現時点で最も適切な運用方法と判断されているからだろう。
とはいえ、全国各地の動向を軽く見回してみると、元々回送扱いだったものを営業路線に設定し直したり、終点から入庫させる車両を車庫止まりに設定して客扱いをするバス路線もなくはないのだ。
上記2パターンがレアケースであるには違いなく、前者は確実な需要を見込めることが必須。後者は既存バス路線の経路の途中に営業所があり、終点からそれほど距離が離れていない好条件が揃っているからこそ運行可能と思われる。
しかし……トップクラスの愛想の良さ!!
バスの行先表示の中でも回送は“おしゃべり”だ。「回送」とだけ書かれた質実剛健な表示をキホンに据えて、少し細かい「回送車」とした表示も比較的メジャーだ。
回送なら見れば乗れないと分かるのだが、「回送中です ご乗車できません」のような、丁寧な説明を加えて無機的な印象を抑える工夫をした表示も登場している。
最近すっかりトレンドになったのが、すみませんの併記。「すみません回送車です」や「すみません回送中です」といった、実に愛想の良い表示が各地の路線車で見られるようになった。
回送バスが走るカラクリを考えながら観察すると、なかなかどうして微笑ましい存在に見えてくる!?
【画像ギャラリー】普通の行き先より種類豊富!? 回送表示の世界(5枚)画像ギャラリー
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