■EVをバスに使う発想
以上は普通乗用車タイプの電気自動車の概略であるが、公共交通機関向けの自動車を電動化させたのは、いつ頃が始まりだったのだろうか。
特に古いもので記録が残っているのは1907年の英国。「エレクトロバス」という、車両の仕組みがまさにそのまま事業者名になった路線バスが運行していたことがあった。
このバスは、架線から電気を拾うトロリーバスとはまた異なり、車両にバッテリーを積んだ純粋なEVの形態。英国ゆえ伝統的な2階建てダブルデッカー構造だ。1回で60kmくらい走れたという。
■華麗なる“元祖”電気バスの短い生涯
ロンドン・ヴィクトリア駅〜リヴァプール・ストリート駅、およそ5.8kmの区間を結ぶ路線で運行され好評だったようだが、資金繰りの問題から詐欺の告発を受け、わずか3年ほどで廃止されている。
20台ほどが導入された2階建て電気バスは、エレクトロバスの廃業後、英国内にある他のバス事業者に引き取られた。
別会社の路線で引き続き使われたものの、スペアパーツの調達が難しくなり、1917年をもって全ての車両が引退した。
また、アメリカにおいても、世界にその名を轟かす発明王(最近は悪人説も…)トーマス・エジソンが関わるメーカーが製造した、バッテリー駆動の電動シャーシを用いたバス車両が、1915年頃に作られている。
ケンタッキー州ルイビルのバス路線に投入されたと伝えられるほか、ニュージャージー州アトランティックシティでの運行計画も存在したらしいが、詳細はよく分からない。
英国エレクトロバスが生んだ2階建て車両の例に話を戻すと、バスとしての電気自動車のライフスパンは乗用車タイプと同じ、ちょうど10年だ。
100年以上前の電気バスに関しては、資料がほとんど見つからず、むしろエレクトロバスとエジソンの電気バスくらいしかないほどだ。記録の数が少ないということは、バスのほうは乗用車ほど普及したわけではなかったと思われる。
次回は、その昔日本でもちょっとだけ花開いたと伝えられる、日本製のクラシックな電気バスを紹介したい。
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