最近、異常気象やコロナ禍に関わる人材不足、運行の不順化などに伴って、バスの交通事故、車内事故、置き去り事故など、悲しいニュースが目に付く。
それは乗務員や運行管理者のミス、熟練度の差などによって起こる人的要因も否定できないというのが現状だ。
しかしバス本体の持つ安全性能や機能、装置や能力をきちんと知り活用すれば、ほとんどのトラブルは避けられるはず。
車線免脱警報装置、車間キープなどの自動運転系能力やEDSS、左側方死角レーダーなどといった最新の装備はもちろん、補助制動機能であるリターダーやAMTシフト操作などについても、高いレベルで安全運行のための機能として、その能力を持っている。
特に高速・観光バスで運用されるハイデッカーには、ドライバーのサポートから安全を確保する機器まで、まるでSF映画のような機能が満載だ。これをキッチリと知れば「いまどきのバスってこんなにスゴイ!!」ということに気付くはずだ。
(記事の内容は、2023年3月現在のものです)
執筆/近田 茂 取材協力/三菱ふそうトラック・バス
※2023年3月発売《バスマガジンvol.118》『バスの性能をキチッと知っておけ!!』より
■バスに搭載されるデバイスを活用すれば事故は起らない!?
気付いてみれば、バスも様々なハイテク安全補助装置が装備されるよう多岐にわたって大きな進化を果たしている。
トランスミッションは多段AT化され、スムーズに自動変速制御されるから運転はとてもラク。ドライバーの負担はかなり軽減されている。
標準装備される補助ブレーキには流体式リターダーが採用され、それを正しく有効活用すれば、フットブレーキを使う必要性(使用頻度)を大幅に減らすことができるのだ。
さらに予防安全をはじめ衝突回避・衝突被害軽減策も次々と進化。ここでの網羅は割愛するが、多方面に渡る実に豊富な先進ハイテクデバイスが導入されている。
今回のこの企画は、バス降坂時に発生した横転事故が発端。調査報告によると、フットブレーキに頼り過ぎた結果、最終的にブレーキがフェード(過熱)し、制動能力を低下させてしまった模様。
あえて大胆に発言すると、最新のバスなら、今回の事故はあり得ないと断言できるのである。
たとえばスピードリミッターを作動させれば、降坂路でも自動的に速度制御されて設定速度を超えることなく安定して山を降りてくることができる。
その際にはリターダーが優先され、必要に応じてブレーキも自動的に協調制御されるため、ドライバーの意志に反してスピードが上昇することはまずあり得ないからだ。
リミッターに頼らない場合でも、5段階に調節できるリターダーを活用すれば、フートブレーキを踏むことなく減速制御でき、タイトなコーナーでブレーキを踏んだとしても、フェードに至る様なことは考えられない。
とはいえ一般的にバス事業者は新車導入後10年は使用する。その後中古購入のバスで事業展開するケースがあるのも実情。
つまりハイテクデバイス装備のバスが広く普及するには、少なくとも10年を費やす必要があるわけだ。
実は今回の事故を起こしたバスも古い型の物で、FFシフトと呼ばれるマニュアルトランスミッション車でリターダーの装備は無いものだった。
ちなみにFFシフトはフィンガータッチで変速操作ができる物で、操作性が快適。ただしドライバーがミスシフトすると機械を壊さないよう、無理なシフト操作を受け付けないような仕組みになっている。
今回の事故では、降坂路でドライバーがエンジンブレーキを使おうと、当然の様にシフトダウン操作をした。
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