■“基本”の伝承が希薄になったことの怖さを自覚して正すべき
ここからは推測に過ぎないが、恐らく3速から2速へシフトダウンするタイミングが早かった(減速不足)のではないだろうか。エンジンの過回転が予測されたことでその操作がキャンセルされてしまい、ドライバーの意に反して2 速には入らなかったと思われる。
3速に入れ直し、ある程度のエンジンブレーキを確保しながら、十分に減速した上で、落ち着いて再度シフトダウンすれば、こと無きを得られたかもしれないと考えると残念でならない。
ふと現場シーンが頭に浮かぶ。プロのドライバーなら、そんなリカバリー操作は当然のこととして平然とこなしてくれるハズである。
それが「あたり前のこと」だからだ。しかし、だからこそ抜け落ちてしまう穴があったと思う。たとえば「人は右、車(自転車も)は左」。基本的な交通ルールとしてあたり前のことだが、あたり前過ぎて、いつしかそれを教育し伝承することが疎かになってしまった。
結果として平気で基本ルールを無視する輩が多数派になってしまっている現状がある。それと同様にバスの運転ノウハウを伝授する教育機会が希薄になっていたのではないだろう。
経験不足などと語られる以前に、いつの世も基本教育を欠かさない姿勢が社会には必要なのではないか。
業界通から耳にした事だが、「リターダーは使うな」と教えられたという実話がある。乗客を大切にする優しい減速操作を徹底するために伝授されたノウハウだが、今のリターダーでいえば、それは使い方次第なのである。
冒頭に記した通り、ほかにも安全安心な快適走行に役立つハイテク装置が沢山ある。果たしてそれらは有効に活用されているのだろうか。
バスの進化に伴い、古い教えを見直し、賢い操縦方法をシッカリ教育していくことが、重要であることを改めて認識することが大切だと思う。
今回の事故は業界への警鐘と捉えるべきだろう。幸い教育気運は高まってきており、新人教育はもちろん、現役ドライバーも含めて、新型バスを使った教育プログラムが増え、すでに三菱ふそうもそれに協力しているという。
新型バスの導入と社員教育の徹底ぶりが事業社のイメージを向上させる要素になった点が見逃せない。
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