ロンドンバスと言えば、それだけで「真っ赤な車体の2階建てバス」と誰もが想像できるほど、一般的にも親しまれている。しかし日本では2階建てバスといえば高速・貸切のみの運行で、そういった意味では馴染みが薄い。そんな2階建てバスって、いったいどんなスキルを持って人が運転しているのだろう。
文・写真:橋爪智之
構成:中山修一
(赤いロンドンバスの写真付きフルサイズ版はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)
■誰が走らすロンドンバス
ロンドンの2階建てバスについては、ロンドン市内中心部の混雑路線が中心で、郊外へ行けば平屋のバスも走っているが、赤い車体なのは変わらない。この車体の色は、1829年に馬車による営業を開始して以来、ロンドンの伝統とも言える塗装だ。
ではこのロンドンバス、どこの会社団体等が管理しているのかと言えば、地方行政機関の「ロンドン交通局(Transport for London/TfL)」が取り仕切っている。日本で言うところの市営バス/都営バスと似た感覚だ。
しかし、ロンドンバスの赤い車体をクローズアップしてよく見ると、ラウンデルと呼ばれるロンドン交通局の円形ロゴとは別に、会社名が記載されていることに気付く。これはいったい、何の会社名なのだろうと疑問が湧く。
■色を統一するのはありかなしか?
現在のロンドンバスの運行形態は、ロンドン交通局の子会社に当たるロンドンバス(London Buses/1999年設立)が路線網の管理を行い、設定された路線ごとに入札で民間の運行業者(バス会社)を決めている。
通常は5年契約(2年間の延長が可能で最大7年)で、5年後には再入札を行うため、契約満了と共に事業者が変わる可能性もある。
車体に書かれた会社名は、ロンドンバスと契約した民間のバス会社の名前というわけだ。東京都の都営バスは、一部の路線をはとバスに業務委託しているが、それをもっと拡大したと考えればよい。
例えばの話だ。都内には都営バスのほか、私鉄系のバス会社が地域ごとに何社もあり、それぞれ会社のカラーで運行されている。
東急バスならシルバーに赤、京急ならシルバーと赤と青、小田急なら白と赤、一目見ればどこの会社か分かる。
だが、東京以外の人が東京へやって来て、路線バスに乗ろうと思ったが、色々な塗装があって、どれに乗ったら良いのか、あるいは乗ってはいけないのか、特に交通事情に詳しくない人の中は、戸惑う方もいるかもしれない。
では、都内を走る路線は東京都交通局がすべて運行路線の管理を行い、各私鉄はそれに合わせて車両を用意し、塗装も都営の色で統一されていたらどうか。
ロンドンバスはつまり、「市内のバスはすべて同じ色」に統一し、一目見てロンドンバスと分かるようにしている、と言える。
ロンドンに限らず、ヨーロッパの路線バスを見ると、業務委託をしている会社でも、塗装を揃えている都市が多いと感じる。外国人の中には、こちらの方が分かりやすいと考える人もいるかもしれない。
一方で逆の考え方をすれば、全部同じ色のバスだと、これまたどのバスに乗ったら良いか分からなくなる、という人も居るかもしれない。
確かに、前述のケースで言えば「○色のバスに乗って」と案内すれば、間違えずに乗ることができるかもしれない。
こればかりは、各国や都市のそれぞれの考え方があるので、どれが正解という話ではない。筆者の使ってみた印象でも、特にどちらに優劣がある、というものでもない。
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