「乗客が多ければ儲かる」とは限らない!? 意外と複雑な都バスの収益構造

ダントツで乗車が少ない系統は?

 一方で、乗車人員の少ない方から見てみると、運行が限定的な路線が目立つのは仕方がない。このうちダントツで乗車人員の少なさで目立つのは「直行02」系統「豊海水産埠頭~東京駅八重洲口」で、63人/日だったが、損益では9位にランクインしている。

都営バス(イメージ)
都営バス(イメージ)

 本系統は「都04」系統の急行版ともいえるが、別系統として計上されている。9位でもギリギリ赤字なのだが、この系統は平日の朝に4便しかなく、しかも豊海水産埠頭からの一方向のみの運行だ。直行02は埠頭で働く方の通勤(退勤)路線だ。

営業係数は?

 直行02系統の損益額自体は若干の赤字にとどまっているが、営業係数は266と全路線のうちワースト2位だ。便数が少ないので経費も少なく損益自体は目立たないが、営業係数となると途端に悪くなる。

都営バス(イメージ)
都営バス(イメージ)

 ちなみに営業係数とは100円の収入を得るのにいくらかかるかという指標で、当然ながら100を切れば黒字だ。直行02系統は全路線中で赤字額としては最も小さいものの、100円の収入を得るのに266円もかかってしまう。

 営業係数という言葉がもてはやされたのは国鉄末期の赤字路線を論じていた時代で、最も営業係数が悪かったのは統計年代にもよるが福岡県の典型的な炭鉱路線であった添田線が4000近い営業係数をはじいてしまった事例がある。

営業係数ワースト1位は?

 営業係数の話が出たので、この営業係数が最も悪い路線はどこなのかというと「里48」系統「日暮里駅前~見沼代親水公園駅前」で288だった。運行区間を見れば一目瞭然だが、この路線は日暮里舎人ライナーとまったく同じ経路だ。並行路線というよりも同一路線と言ってもよい。

イベントでの送迎バス受託もある都営バス
イベントでの送迎バス受託もある都営バス

 支線もあるのですべてがそうと言えないものの、日暮里舎人ライナーのバックアップとして、あるいは階段を避けたい沿線の高齢者や日暮里舎人ライナーよりも細かに停車するのでバス停に近い人が利用する程度だ。

 よって乗車人員も少ない。毎時2本程度で便数も少ない系統だが、異例の2営業所共管路線で巣鴨営業所と千住営業所が担当している。

 これにより、日暮里舎人ライナーに不測の事態が発生(実際に脱輪事故が発生した)した際にすみやかに代行輸送ができた。路線がありバス停も設置されているので臨時便をできる限り多く出す対応は直ちに可能で、近隣のバス会社にも応援を依頼してバスを確保し臨時便の手配をした。

 2営業所共管であったために両営業所の運転士にはルートや停留所の説明が不要で乗務員の即応体制も整っていた。

乗ることによりささやかな支援になる!

 これら営業係数の悪い路線は、単に乗客が少ないから赤字だと判断するには酷な事情や、災害時のバックアップという目的もあり直ちにどうこうなるわけではなさそうだが、公共交通機関というものは個別に見ると得てしてそういうものだ。

都営バス(イメージ)
都営バス(イメージ)

 他の交通機関と連携・接続して総合的に輸送するものなので、系統別の収益や乗車人員または営業係数は重要な指標であることには違いないが、全体としてどの系統でも乗ることにより支援できるので、お出かけの際は積極的に乗りバスをして、ささやかに支えてみてはいかがだろうか。

【画像ギャラリー】 都営バスの系統別乗車人員の多少と営業係数の関係は?(14枚)画像ギャラリー

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