ドライバー不足解消にワザあり!! 都市間バス「ねむろ号」が客貨混載の本格運行を開始!!

ドライバー不足解消にワザあり!! 都市間バス「ねむろ号」が客貨混載の本格運行を開始!!

 根室交通、くしろバス、ヤマト運輸の3社は、根室交通とくしろバスが根室―釧路間(釧路線)で共同運行する都市間バス「ねむろ号」を活用して、ヤマト運輸の「宅急便」を輸送する「客貨混載」の本格運行を開始した。運送業は旅客も貨物もドライバー不足だが解決になりえるのか。

文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■「地域の足」と「地域の物流」をつなぐ持続可能な連携モデルへ

都市間バスのトランクルームを貸切でコンテナを搭載する
都市間バスのトランクルームを貸切でコンテナを搭載する

 発表によると、過疎地域における交通・物流インフラの維持が課題となる中で業種を越えて各社の経営資源を活用することで、持続可能な地域社会への貢献を目指すとしている。

 具体的な貨客混載輸送の流れは次の通りだ。ヤマト運輸釧路西営業所(釧路市)に到着した厚岸郡厚岸町行きの荷物を、ヤマト運輸のセールスドライバーがくしろバス本社(釧路市)まで輸送する。ねむろ号のトランクルームに荷物を積み込み、根室交通のドライバーが厚岸郡厚岸町まで輸送する。ヤマト運輸厚岸営業所(厚岸郡厚岸町)と、ねむろ号の停留所「茶内」(厚岸郡浜中町)でヤマト運輸のセールスドライバーに荷物を引き渡す。

 貨客混載のメリットは、自治体の側面からは地域住民の生活にとって重要な交通インフラの維持が期待できることだ。また、根室交通・くしろバス(バス事業者)にとっては、都市間バスの維持存続に向けた安定的で新たな収入源の確保が期待できることだ。一方で、マト運輸は安定的な輸送力の確保と一部荷物の配送リードタイムの短縮に温室効果ガス排出量の削減ができるとこだ。

■バスで荷物運ぶことの可能性

特急くしろ号の地点間の所要時間(出典:根室交通)
特急くしろ号の地点間の所要時間(出典:根室交通)

 この取り組みの特長は、バスの運行ルートに近いヤマト運輸の営業所にバスが立ち寄るため、セールスドライバーとの時間調整が不要で、バスの運行ダイヤへの影響も抑制できる。またバスの大容量トランクルームを貸切利用するため、複数種類(常温・冷蔵・冷凍・お買い物便)のコンテナを効率的に積載が可能であることだ。

 貨客混載を実施する対象路線は、「ねむろ号」(根室―釧路線)の平日で、くしろバス本社12:40発 ⇒ 根室交通有磯営業所16:00着の便だ。

■取り組みの背景

ねむろ号のダイヤ
ねむろ号のダイヤ

 北海道の中で最も広大な道東地域では、人口減少により鉄道やバスの減便や廃線が進んでいる。根室―釧路間を結ぶ釧路線も、利用客の減少により路線の存続が困難であると考えられていた。しかし自動車の運転ができない高齢者層や若年層などの交通弱者にとって、通院等の重要な市民インフラであることから、北海道庁や根室市などからの支援と運行本数の減便により運行を継続していた。

 一方でヤマト運輸は、北海道内で138カ所の拠点を持ち道内全てのエリアに物流サービスを提供しているが、過疎化や輸送力の低下が進むなかで持続可能な物流ネットワークの維持が課題になっている。2025年4月1日(火)から、ねむろ号を活用した客貨混載の実証運行を行い、実用性や安全性を確認したことから本格運用に移行したようだ。

■貨客混載の歴史

 鉄道においては主にローカル線で混載ではないが、客車と貨車を併結する混合という編成で走らせていた歴史がある。荷物輸送がトラックにとってかわる以前は荷物列車や荷物車を連結した旅客列車が多く運行されていた。

 自動車と旅客を一度に運ぶカートレインは昭和世代の方であれば覚えているだろう。しかし全体として効率が悪く、貨物にも旅客にも速達性を確保することが難しかったことから貨客分離が進み現在に至る。

 昭和40年代くらいまでは国鉄バスが自動車駅から手荷物や小荷物や貨物をトラックやバスで輸送していたので、現在行われている貨客混載とは異なるものの、国鉄バスから国鉄の列車を介して日本全国へ届けることができ、意外にも歴史は深い。

 現在の貨客混載の要因は二酸化炭素削減等の理由もあるが、最も大きな要因は貨物も旅客も運転者がいないことによるバスは減便や路線廃止、貨物は輸送困難や遅延だろう。

 いずれも運転する人がいなければ荷物も人も運べない。鉄道は治療輸送に向いているが、そもそも鉄道が廃止されればその代替をバスがするという半ば既定路線のようなことが当たり前になっていた。

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