2016年度の観光客数が過去最高を更新した沖縄。その全国きっての観光地で、間もなく中国製のEVバスが運行開始するという。一部でハイブリッドのバスも導入されてきているものの、バスと言えばディーゼルエンジンを搭載している車両がほとんど。なぜEV、それも中国製のバスが沖縄で導入されることになったのか。
文:ベストカー編集部
ベストカー 2018年1月26日号
暑い沖縄ゆえの導入理由とは?
沖縄で、クルーズ客船の船舶代理店業務を行っている有限会社沖縄シップスエージェンシー(那覇市)が、自動車、IT製品などを製造する中国大手BYDの電気バス10台を導入し、2018年春から運行を開始すると発表した。
今回導入されたのは、電気バス「K9」。実はこのK9は、2015年に京都市の路線に5台が導入されており、日本導入は2カ所目となる。
ところで、なぜ沖縄で導入することにしたのだろうか? その疑問を沖縄シップスエージェンシーの松田美貴会長に聞いてみた。
「暑い沖縄では、待機中にエアコンをかけるため、ディーゼルエンジンのバスでアイドリングをしていると排ガスが臭く、お客様に不快感を与えるという理由からクリーンな電気バスを探していました」
「そこで海外企業とのマッチングを推進している沖縄県からBYDを紹介され、ラインアップにクルーズ船からのお客様を乗せることに対応したノンステップ電気バス『K9』があるということで選定しました」
ーー今回導入した電気バスの運行エリアはどこでしょうか?
「那覇港新港埠頭9号、10号岸壁からクルーズターミナルまでの間になります。クルーズ船から下りたお客様に岸壁を歩かせることができませんので、その間の約1kmを往復することになります」
ーーどのくらいの間隔で充電を行うのでしょうか?
「K9は、1充電で250km以上(エアコン使用時)走行できますが、1日走っても14~15km/1台くらいなので、計画では4日に1回のペースでの充電になると思います。専用充電器が6台あり、ターミナルで当社が委託している会社が行います」
ーー乗ってみた印象はどうでしょうか?
「振動はまったくなく、音もない。そこがビックリしましたね。EV接近音も出ないため、近くにいることに気づかないくらいです」
松田氏によると、2020年4月に宮古島(沖縄県)と沖縄本島の本部港を結ぶ官民連携の20万トン級の岸壁が完成し、1隻あたり約6000名の乗客が利用するため、それに合わせてさらに80台増車する予定になっているそうだ。
NYやロンドン、世界各国の都市を走るEVバス
日本でEVを使用する際に気になるのは、何より充電だろう。BYDは中国の規格のコネクタを使用しているようだが、チャデモ方式(=日本発のEV用急速充電規格)には変えないのだろうか? そこでBYD日本支社に聞いてみた。
「日本国内で販売する乗用車は、チャデモ方式のコネクタが推奨されていますが、バスなどは同じ車庫から出入庫するので、独自規格でも可となっています。ですので、車庫に専用充電器を設置していただいています」
日本では耳馴染みの薄いBYDだが、世界的に見るとどうなのだろうか?
「当社の製品、特に公共交通機関である電気バスは、ロンドン(イギリス)、ニューヨーク(アメリカ)、ロサンゼルス(アメリカ)、ドイツなど西側諸国でも相当数が導入されており、その販売シェアは世界ナンバーワンです。低価格で信頼性の高い製品を供給できる強みを持っています」
ロンドンやニューヨークなどの主要都市で導入され、安定運行とエコ性能が評価されているBYD製の電気バス。価格も欧州ライバルメーカーの輸入車よりも2割ほど安く、走行距離も長いということで、今後日本でもさらに導入が進んでいきそうだ。
■電気バス BYD K9(12m) 主要諸元
全長×全幅×全高:12050×2550×3360mm
出力(モーター):90/150kW×2
動力用主電池:リン酸鉄リチウムイオン電池(BYD製)
走行距離/1充電:250km以上(エアコン使用時)
価格:6500万円(税別)
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