バス業界はコロナの影響も含めて多くの苦悩を抱える。その1つが乗務員不足だ。日本全国どの事業者もハンドルを握る乗務員のなり手がない中で、その確保のために多くのリソースを割く。そんなバス業界の中でスマホアプリを活用して乗務員自らが進んでリクルーターになっている名鉄バスを取材した。(連載記事・上から続く)
文:古川智規(バスマガジン編集部)
画像提供:名鉄バス株式会社・株式会社MyRefer
【画像ギャラリー】乗務員不足を解決する名鉄バスの切り札とは?(下)
サービスエリア休憩中での出会いでも?
(上)に続き、オンライン形式で名鉄バスの人材開発担当主任である入江直美さんに伺った話の続きからスタートする。
--記者:しかし乗務員の知り合いでなければ接点はありませんね?
「じつは実例を挙げるとそうでもなくて、例えば高速バスで途中休憩のサービスエリアの喫煙所なんかで乗務員に声を掛けたバスファンの方や乗務員の仕事に興味のあった方が、そのまま乗務員の知り合いになりアプリを見て応募したということもありましたので、一概に友達だけというわけでもないようです」
--記者:実際に乗務員が採用活動をするということですか?
「そこまではしません。本来は人事担当者がお伝えする採用条件や待遇はすべてアプリに書かれていますので、その説明は不要なのです。応募していただければ改めてこちらで説明しますからね。乗務員には細かいことではなくて、実際のバス運転士の仕事を、つまり日常を伝えてもらうだけです」
「それであれば難しいことを覚える必要も伝える必要もありません。応募される方も条件等は人事担当者に聞いていただければよく、一番知りたい仕事の実際を先に聞いて考えるメリットがあります」
--記者:なるほど。しかし好待遇であれば東海以外からの応募もあるのではないでしょうか?
「おっしゃる通りです。ですから入社から一定期間、上限はありますが敷金・礼金・家賃を会社で全額負担することにしました」
--記者:アプリを導入して乗務員は増えましたか?
「現在では乗務員の約85%がアプリをインストールしていますが、おかげさまで年間20名の採用ができています。これはアプリなしの時と比較して約2倍の実績です」