運転手不足に悩まされている日本のバス業界は海外に比べて合理化精神が低いと感じる件

運転手不足に悩まされている日本のバス業界は海外に比べて合理化精神が低いと感じる件

 バス運転手はなぜ職業として敬遠されるのか。バスだけでなくタクシー、鉄道、航空パイロットも不足しているという。どうやら合理化の遅れとともに、不要なルールが多過ぎるゆえの敬遠があるのかも……。

(記事の内容は、2025年3月現在のものです)
執筆・写真/谷川一巳
※2025年3月発売《バスマガジンvol.128》『バスにまつわる愉快だけどマジな話』より

■人口減でも日本は人口が多い国なのに人手不足?

多彩な路線バスが運行するが、すべて市の交通局路線(台湾)
多彩な路線バスが運行するが、すべて市の交通局路線(台湾)

 運転手不足から減便、路線廃止、バス会社消滅といったことまで起きている。

 バスだけでなく鉄道でも、運転士不足を理由に減便となった例もある。

 各業界で「人手不足」なのである。高齢化社会なのと、人口減が重なっているので、これらが原因とされがちであるが、人口が減ったとはいえ、世界的に見ると日本の特徴は現在でも「小さな国土に多くの人が住む」国である。

 筆者はここ1~2年、北欧、ニュージーランド、オーストラリアなどへ渡航した。これらの国は人口密度が低いが、公共交通の人手不足という話は聞かない。

 なぜ、日本では運転手不足なのだろう。また、人手不足になっていない諸外国と何が違うのであろうか。利用者目線でしかないが、筆者が海外で感じたバスと、日本のバスの違いを綴ってみたい。

■事業者が多過ぎるのが原因ではないだろうか……

公共交通事業者統一は必須で、路面電車と走路を共有(ノルウェー)
公共交通事業者統一は必須で、路面電車と走路を共有(ノルウェー)

 日本の交通機関の特徴として、事業者が多く、その多くが民間会社という点がある。会社数が多ければ、会社ごとに営業、総務、人事、広報、整備部門などが必要であろう。利用者への影響としては、運賃の違いなどを伴ってしまう。

 海外ではどうかというと、日本で例えるなら東京都内はすべて東京都営バスというように、公営交通として一括管理されている。

 東京では地下鉄2事業者、多くの私鉄、JRなどの鉄道事業者もあるが、海外では1組織が管理し、鉄道からバス、バスから鉄道と乗り継いでも、1回の運賃というのが多数派である。

 日本のようにその都度初乗り運賃を払うというシステムは世界では少数派である。海外では短区間でもバス利用者は多く、利用者も多いと感じる。効率的になり、運転手の賃金も上がるであろう。

 日本は「現状維持」派が多く、大きな変革は好まれず、新しいことは「日本の風土には合わない」などとされてしまうが、大改革を行った都市もある。

 台湾の台北はかつて公営バス(交通局)と民間バスが入り交ざって運行していた。しかし、現在は、交通局は運行を行わなくなり、民間バスの取りまとめ役となっている。

 その結果、重複路線などは整理され、乗り場、運賃、ルールなどは統一され、利用者の利便性は向上したのである。

■運転手なのだから運転に専念させていただきたい

クレジットカードのタッチ決済で運賃授受(イギリス)
クレジットカードのタッチ決済で運賃授受(イギリス)

 海外では、運転手は「運転に専念」というのも定着している。運賃授受はなく、切符購入は利用者のモラル任せにし、しばしば係員が検札を行い、無賃乗車には高額な罰金を課する国も多い。

 切符やICカード乗車券はバスターミナルの有人窓口、コンビニで、またはスマホのアプリからの購入となる。

 クレジットカードのタッチ決済に対応するバスも多くなっている。アジアでもシンガポールでは1回だけの乗車券がなくなっている。

 いずれにしても、運転手の負担軽減が必要と感じる。現金での支払いだと「お釣りがない」とか、お釣りの計算など、機械で行うと新紙幣への対応などで機器の更新などが必要で、合理化が進まない。

 海外では、その国へ10年も行かないと「バスの乗り方がガラッと変わっていた」ということがあるのに対し、日本は20年、30年経ってもあまり変わっていないという印象である。「変わらない」のがいいとも思えるが、世界では「省ける部分は省く」という流れである。

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