古いけど新しい交通機関として活躍中!! 都市間“鈍行バス”が繋ぐ元・JR留萌本線が健気すぎる!!

古いけど新しい交通機関として活躍中!! 都市間“鈍行バス”が繋ぐ元・JR留萌本線が健気すぎる!!

 まさかと思っていたら中核の部分がバッサリ切られてしまったJR留萌本線。その代わりになった交通機関に目を向けてみると、ちょっと変わった性格のバスが毎日走っていることがわかった。
文・写真:中山修一
(JR留萌本線と沿岸バス留萌旭川線の写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)

■なぜかだんだん短くなっていく!?

留萌駅へと向かう1両編成のディーゼルカー(2012年撮影)
留萌駅へと向かう1両編成のディーゼルカー(2012年撮影)

 深川〜留萌〜増毛間66.8kmを結んでいたJR留萌本線。極端に利用が少なかったと言われる末端の留萌〜増毛間16.7kmが廃止されたのは2016年12月のことだ。

 残った深川〜留萌間50.1kmは、都市間を結ぶ交通の動脈にあたる区間な上、廃止云々と騒がれる前から、そこそこお客も乗っていた印象があった。

 ところがイメージと現実はアカの他人同然だったようで、JR北海道が公表している統計データに目を通せば、晩年は100円稼ぐために2,200円近くの経費がかかっていたのが窺える。

 そのような厳しい実情から、最も利用者の多い深川〜石狩沼田間を除いた、石狩沼田〜留萌間35.7kmが、2023年4月にとうとう役割を終えた。

 2024年8月現在も営業を続けている石狩沼田までの区間も、2026年4月に運行を取りやめると伝えられる。

■古くて新しい代替バスの誕生

 JR留萌本線の主要区間がなくなった後、代わりの公共交通機関に選ばれたのは定番の路線バス。地元周辺のバス事業者・沿岸バスと、旭川市の道北バスが共同運行する「留萌旭川線」がそれだ。

代替バス「留萌旭川線」。この便は沿岸バスが担当している
代替バス「留萌旭川線」。この便は沿岸バスが担当している

 先に代替バスが走り始めた留萌〜増毛間と同様、新設ではなく既存の競合バス路線に、代替交通の性質を追加で持たせた形になっている。

 路線名の通り、旭川〜留萌間を深川経由で直通する路線で、感覚的にはJR線時代に若干の設定があった、旭川始発の留萌本線直行列車に雰囲気が似ている。

 このほか、2023年4月から3年間、旭川〜留萌〜羽幌を結ぶ高速バス「特急あさひかわ号」が実証運行している。

 こちらも留萌本線(と国鉄羽幌線)の代替バス的な要素を含んでいると言えそう。ただし留萌本線の起点になっている深川駅の周辺には停車しない。

■進行方向に御用心?

 深川〜石狩沼田間の鉄路は健在ながらも、沿岸バス/道北バス留萌旭川線の、代替バスとしての性質が強いのは深川〜留萌の区間だ。

 バスの停留所は深川駅前のロータリーにはなく、駅から300mほど離れた大通り(本町通り)に置かれている。名称は「深川十字街」。

 駅を背にして交差点を横切る大通りの前に立つと左が旭川方面になる。だんだん旭川から離れていかないと不自然に感じるゆえ、それなら右が留萌方面だろうと考えたくなる。

 とこがこの深川十字街バス停から留萌行きのバスに乗ろうとする場合、利用するのは旭川方面の車線側のバス停になる。一方で旭川行きのバスは反対車線側のバス停に停まる。

バス停標識に方面が大きく書かれている
バス停標識に方面が大きく書かれている

 これは道路の配置の関係で、留萌行きのバスに限り旭川・留萌方面が一瞬だけ同じ進行方向になる位置にバス停があるためだ。初見だと方向感覚を狂わされて少々戸惑うかもしれない。

■独自ジャンルのレアなバス!?

 留萌旭川線は1日5往復。最終バスが終点に到着する時間帯は上り/下りとも19時台まで。朝夕にバスが集中しているわけではなく、ほどよく分散したダイヤ設定になっている。

 この路線は全区間84km、代替バス区間に絞ると約50kmを走る。それでも高速道路には乗らず、83箇所の停留所をきめ細かく通る一般路線バスの扱いだ。

 とはいえ車両は通常の2ドアの路線車ではなく、よく高速バスや特急バスに使われる、1ドアでハイデッカータイプの高速車での運行となっている。

トイレ付き車両で万一の際も安心
トイレ付き車両で万一の際も安心

 予約不要な一般路線バスの扱いで、「特急」や「急行」といった種別は付かず、停車ポイントが極めて多く、大きな街と街を結び、それなりの距離を走り、高速道路を通らず、使われているクルマはトイレ付き高速車。

 さしずめ「都市間鈍行バス」といったバス像だろうか。そんな性格を持ったバス路線も、ありそうで意外と珍しい気がする。これはこれで一般路線バスとはまた別のジャンルのバスとして数えられそう。

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