名著、名曲で有名な天城峠……そこを越えるバスには100年以上という深すぎる歴史があった!!

■いかにもな山を走るバス

 16分ほどの乗り継ぎ猶予を経て、C50系統は河津駅を後にし、天城峠へ向けて国道414号線を走り始めた。

 途中、湯ヶ野温泉を通り過ぎ、河津を出て25分ほど経つと、このエリアの目玉観光スポットの一つになっている河津七滝への玄関口である河津七滝温泉に停車。

 ここで4分ほどトイレ休憩があり、出発して割とすぐにトイレ休憩を挟むのも変わっているな、と思った。

 ちなみに深夜ドラマで有名になったワサビ丼を提供しているお店は、河津七滝温泉バス停から歩いて1〜2分くらい。

七滝ループ橋をエルガミオが力強く登る!!
七滝ループ橋をエルガミオが力強く登る!!

 休憩ののちバスはメインルートに戻り、行程上の大きな見どころである、1981年に完成した七滝ループ橋に差し掛かる。バスで挑むループ2回転は迫力十分。

 天城“峠”と呼ばれるだけあって、前後左右を山に囲まれ、くねくねとしたカーブを何度もこなしていく、いかにもな山を走るバスといった乗り味で、都会のバスとはまた違ったアトラクション性を感じる。

■ちょくちょく小休止するワケを考えてみると

 出発して50分ほど経つと、道の駅を含めた各施設が営業している「昭和の森会館」バス停に入り、ここでも3分ほど停車した。

国道から一旦外れて、昭和の森会館の駐車場にバスが立ち寄る
国道から一旦外れて、昭和の森会館の駐車場にバスが立ち寄る

 全区間41kmほどの距離を走るバスで、トイレ休憩が2回もあるのは何やら不思議で、ほかにも途中でちょくちょくプチ停車した場所が割とあった。

 どうしてこんなに小休止するんだろう? と考えてみると、どうもバスが搭載している設備に関係していそうな気がしてきた。

 S32→C50系統のいすゞエルガミオは、前面に自転車を積んで走行できるサイクルラックバス仕様車。このサイクルラックをどこで使えるのかと確認してみれば、ちょうど河津駅〜修善寺駅間のC50系統だった。

 バス1台につき自転車を前面に2台と、車内にタイヤを取り外した状態で1台の、計3台まで積載可能。天城越えを自転車で楽しみたい人たち向けに、無理のないようバスがサポートしてくれるわけだ。

 当然ながらバスのサイクルラックに自転車を積むには時間が必要。積載希望の利用者がいた場合、タイトな時刻設定にすると、自転車の積み込み/積み下ろしにかかるロスタイムで遅延が生じてしまう。

 そこで運行ダイヤに予め数分間のバッファーを設けて、遅れ防止対策を取っているのかもしれない。当日は自転車の利用がなかったため、スムーズに進んだ結果7分+ちょくちょく小休止を挟んだと思われる。

緑に囲まれた道筋を軽快に走り抜ける
緑に囲まれた道筋を軽快に走り抜ける

 それにしても、天城峠の区間だけを利用するお客さんが結構多かったのが意外だった。長めの距離を走る路線バスは、大抵の場合両端だけ利用者がいて、その間は誰もいない印象が強い。

 一方で、C50系統のような真ん中の区間で乗り降りが旺盛な路線というのも、ハイキングコースが用意されている天城峠ならではの特徴とみた。

■伊豆半島を縦断する貴重な公共交通機関

 天城峠を通り抜けて、道路沿いに立てられた看板の名物がワサビから猪最中へと変わり、だんだん終点が近づいてきた。

 河津駅〜湯ヶ野温泉〜天城峠〜湯ヶ島温泉〜修善寺、の行程を経て、終点の修善寺駅へ所要時間92分で到着した。運賃は2,030円。

伊豆箱根鉄道駿豆線の修善寺駅の前がバスの終点だ
伊豆箱根鉄道駿豆線の修善寺駅の前がバスの終点だ

 大正時代に天城峠を越えていたとされる、100年以上前に走っていた下田自動車のバスがどんな乗り物であったかを想像しながら、その末裔と言える東海バスC50系統の姿と照らし合わせて目的地へ向かう、ヒストリカルなバス旅になった。

 現在のところ、伊豆半島の中央部分をキレイに縦断してくれる路線バスはC50系統くらいしかないようで、国内最古クラスの路線にして、同地の公共の足を支える貴重な存在であるのは間違いない。

【画像ギャラリー】国内最古級の路線バスで行く歴史ロマンの旅(10枚)画像ギャラリー

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