みなさんはバスで一夜を過ごしたことはあるだろうか。恐らくイメージするのは都市間夜行バスだと思うが、そうではなく違った形でバスに「泊まる」ことができるのだが、それはいかがだろうか。今回はそんなバスに乗車、いや宿泊してみたので特に一般の方向けの楽しみ方についてレポートする。さまざまなマニア向けの楽しみ方は稿を改める。
文/写真:東出真
編集:古川智規(バスマガジン編集部)
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■西伊豆特急
まず着いたのは静岡県沼津市である。今回の移動のために利用する東海バスフリーきっぷ「全線2日券」を入手する。この乗車券は東海バス全路線が乗り放題で、伊豆にある約50ヶ所の施設で使える割引特典もある。価格は大人4900円と決して安くはないが、うまく経路を考えて乗車すればお得だ。ちなみにフリーきっぷは沼津駅南口のバスターミナル東側の東海バスの沼津営業所や、駅ビル2階にある沼津観光協会でも購入可能だ。
筆者はここから三島駅へと移動、そこからは伊豆半島を南下する。やってきたのは高速バスタイプの車両「西伊豆特急」である。この路線は三島駅から伊豆半島の西側、いわゆる西海岸線を走るバスで終点の松崎までを約2時間ほどだ。バスが到着すると早速待っていた乗客が乗り込んでいく。
だいたい10人ほどが乗車して出発した。三島駅を出ると長岡温泉、土肥温泉と立ち寄り、車窓右側に駿河湾が見えてくる。土肥温泉でトイレ休憩で5分ほど停車して再び南下を始める。温泉地を結んで走行するルートなので乗降もあり需要は高そうだ。ドライブスポットである恋人岬を過ぎると目指す場所はもうすぐだ。
三島駅を出て約2時間、着いたのは「バイパス宇久須」バス停である。フリーパスを見せて降車し徒歩数分、見えてきたのはやや古めの建物で、その横には東海バスカラーのバスが置かれている。これが今日宿泊する「ばすてい」だ。
この建物はかつては鉄道との直通乗車券を販売していた「宇久須駅」として長らくバスの案内所と待合室として使われてきたが、2022年3月31日にその役目を終えた。その後建物はリノベーションされ、2023年11月17日にバス案内所にバスを置いた宿泊施設「ばすてい」として生まれ変わった。由来はバスで過ごすということで「バス」で「ステイ」ということから「ばすてい」となったそうだ。
今回利用したフリーパスは目的地である西伊豆に1往復するだけで元は取れるが、沼津を観光しながら特急バスの始発地である三島駅まですべて東海バスを利用すると、沼津や三島市内の路線バス分もすべてコミコミになるのでお得感がさらに増す。
■「ばすてい」は元バス駅だった?
チェックインは宿の従業員がいるわけではないので無人で行われる。予約した際に送付されるメールにキーナンバーが書かれているので忘れずに持ってきてほしい。鍵は敷地に入るところと建物に入るところの2ヶ所にあるので、手順に従って解錠する。
建物内に入るとチェックインを行うためのタブレットが置かれているので、冊子の手順に従い作業を終わらせればあとは自由気ままに過ごすことができる。
建物は1950年建築の築75年という「宇久須駅」であるが、外観は当時のままを維持しながら、内装などはしっかりリノベーションされているのでとても綺麗だ。コンクリート打ちの待合室はリビングエリアだ。当時使用されていた待合室のベンチ、食事等で使用する大きめのテーブルが設置されている。
サイドボードには東海バスのミニカーやグッズが並べられていて、当時の観光パンフレットや路線案内、事務所で実際に使われていた黒電話が展示されている。また壁面には当時使用されていた看板や道路情報板、点呼基準などが飾られこちらもなかなか興味深いものとなっている。
待合室エリアの奥はカウンターキッチンがあり、対面でやり取りができる。食器や食事の受け渡しが可能のほか、窓部分も大きいので匂いや煙が流れ込んでくることもなさそうである。収納スペースには食器類や調理道具、鍋やフライパン、IH調理器、炊飯器、電子レンジに冷蔵庫もあり、生の食材を持ち込み料理することも可能だ。
またBBQコンロも容易されていてグループでBBQを楽しむこともできる。宿泊の定員は5名で食器も人数分用意されている。建物の奥は更に部屋があり、洗面所に浴室、トイレに寝室が並ぶ。ベッドは屋内寝室に2台用意されテレビも設置されている。
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