■制服着用で点呼を受ける
10時(実際の教習は8時30分)に「出勤」した記者は、用意されたフジエクスプレスの制服に着替え、教官の井上運転士とともにアルコールチェックと血圧測定を行い、問題ないことを申告して点呼を受けた。もう教習は始まっているのだ。
点呼では取材による体験教習である旨を伝えられ、安全運転で確認を怠らずに無事に帰ってきてくださいという訓示が伝達された。続いて本日乗車する車両に向かい、点検の教習を受ける。
教官が一通り行ったのを覚えて、もう一度同じことをやる。書類や装備品のチェックに始まり、外装、電装系、駆動系のすべてを目視と自分の手とハンマーを使用して点検する。
■急ブレーキの恐怖!
車両点検が終わると、教官が急ブレーキの恐ろしさを体感してもらうとのことで、カメラマンとして同乗してもらったフジエクスプレスのバスガイド浅野史歩さんと記者は客席に座り、構内を加速したままホイールロック式のサイドブレーキをかける。相当なショックとともに体が前に持っていかれる。
続いて加速中にフットブレーキを思いっきり踏み込んでの急ブレーキ操作だ。バスのブレーキはエアブレーキでその効き具合は乗用車の比ではない。相当なショックが予想される。
座っていて、あらかじめ急ブレーキを踏むことがわかっていても、体が飛んでいきはしなかったものの投げ出される。立席でスマホでも触っていれば間違いなく車内転倒事故だろう。運転士が座席が空いていれば座ってほしいと切に願うのは、こういうことを想定してのことだったのだ。
続いて転倒事故が多いシチュエーションで、発車直後の時速5km/h程度で飛び出しがあり、急ブレーキを踏むという想定だ。速度が出ていないので…などと思っていたら大間違いで加速中とほぼ同じ慣性力がかかり、やはり体が飛んでいきそうになる。要するに速度ではなく時速0km/hになる瞬間が最も危険だということを実感した。
間違えていただきたくないのは、運転士は急ブレーキを踏もうとは微塵も思っていないということだ。まさに「やむを得ず」踏まざるを得ないのだ。よって急ブレーキがかかるときは運転士も乗客もまったく予期せずという場面なので、優先席でも空いていれば座ってもらった方が安全だということだ。
同乗した浅野史歩さんもこういう訓練は初体験だったようで、ガイド口調はどこへやら、急ブレーキの衝撃でついつい「危ね~!」と叫んだほどなのだ。
■車両移動と車いす対応
短い距離でバスの位置を正確に変える訓練を行った。前進と後退で行う。これは「できるできない」ではなく、運転者がどこを見てバスを操縦しているのかを観察しているのだ。バスの挙動を正確につかみ取るのに見るべき場所は極論だが1か所なのである。
車いす対応では、同社に訓練用に用意されている車いすを実際に使用して座席収納、スロープ展開、乗車、固定し、その逆の順序で降車するまでを行う。仕様の違う車両が存在するので、実際の教習では何日もかけてすべての仕様のバスで車いす対応を行う。
もちろん乗客への声掛けやお願いも行わなければならない。こうして午前の教習は終わり、ここまでで、まだ構内でしか運転していない。昼食を取りに同社の食堂に向かう。~続く~
【画像ギャラリー】【バス運転士不足問題】バイト運転士になったとしたら?フジエクスプレスが教習をさせてくれたので体験してきた!~午前の部~(12枚)画像ギャラリー
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