2024年11月と2025年3月に開催され大好評だった「白棚線運転体験イベント」が再開催された。参加条件が厳しすぎるが、それでも満員御礼の「運転」体験では済まない本物の「運転士」体験を取材したので2稿にわたりレポートする。本稿はその前編である。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■ツアー料金は50000円!
世の中にはバスの運転をさせてくれるマニア向けイベントは多く存在する。運転士募集のための無料体験だったり、マニア向けの有料ツアーだったりとさまざまだ。ジェイアールバス関東(以下、JRバス関東)に残る白棚線廃線区間(表郷庁舎前~高木の先にある国道との合流地点)を本物の路線バスで運転させてくれるツアーが開催され、今回も満員御礼で完売した。
JRバス関東によると、今回からふるさと納税枠も設けて、せっかく開催したツアーで地元の白河市にお金が落ちるようにしたとのことで、地域活性化にも一役買っているようだ。そのツアー料金はなんと50000円! これは一般参加の料金で、ふるさと納税枠はもう少し高い。
それでもふるさと納税枠での参加者もいて、結果的に使ったお金は自分が納税するはずの税金なので、高くても気にならないとのことだった。
この50000円という料金には交通費は含まれていない。東北本線・東北新幹線の新白河駅集合解散である。昼食や記念品はついているが、果たして参加者はどのように感じたのか。記者も一応、現役の運転士をしているので会社に許可を取り制服と名札を着用して取材した。
■ツアーの詳細は?
ツアーの詳細は次の通りだ。全国的にも珍しい「バス専用道」を運転出来る貴重なイベントで、運転体験は白棚線廃線区間(表郷庁舎前~高木の先にある国道との合流地点)を2往復する。2台のバスで専用道を走行し、専用道内での離合(すれ違い)も体験する。車両は現在も白棚線で使用されている、現役の車両を使用する。
参加条件は、大型一種免許以上を持っていることだ。有償旅客輸送ではないので、大型一種免許でも構わないが、大型免許を持っている人だけが参加できるという厳しすぎる条件である。
使用予定車両は1997年式日野自動車製(棒ギア車)、2000年式日産ディーゼル製(フィンガーシフト車)だった。車両を選ぶことは出来ないことになっていたが、当日は営業所構内での練習を含めて2台とも運転はできた。イベント中の撮影は、スマートフォンやカメラをスタッフが持って車内からの撮影のみ手伝ってくれる。
車外からの風景撮影は、途中停留所で下車して自由に撮影しても良いことになっていた。つまり、運転士にも乗客にもなれるということだ。これは運転士役は降車ボタンが押される可能性があることを意味する。
■本物すぎる運転士体験のスタート!
さて、新白河駅へのお出迎え車両は実際に運転体験で使用する車両称号「L526-00505」は日産ディーゼル・富士重工業製だった。記者を含めて8名の参加者全員がそろったところで白河支店に向かい出発した。到着後、当ツアーのために貸し切られた会議室に通され、先にツアーの同意書に記入を求められる。
そして先に記念品が渡されて、早速練習運転と行きたいところだが、その前にる出発点呼よろしくアルコールチェックを受ける。これは当然ながら点呼の真似事ではなく本物である。仮に引っかかった場合は、ツアーに参加できないばかりか、規定により支店の敷地外に退去を求められる厳しいものだ。幸いにも全員がパスして構内練習に向かった。
そして当日の大切なアイテムが渡される。行路表とスタフである。行路表は本日の全ダイヤが記載され、スタフは自分が担当する専用のものである。
これらは当日のために本物と同じ仕様で作られ、途中の停留所で下車して撮影したり、また乗車して次の行路出発地点まで行ったりと、運転士としても乗客としても紛失しては大変なことになる重要アイテムだ。
自分の行路を確認して乗り継ぎ停留所に行かないと、出発地で次の運転士がいないということになってしまう。2台バスを運転でき、合計4往復の運転ができるが、よく考えられていてそのまま乗っておくことも可能だが、実は2台目のバスの運転は反対側の出発地からのスタートになっており、必ずどこかで下車してもう一方のバスに乗り継ぐことが必要な行路になっていた。
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