バスファンにとって大型バスを所有することは夢のひとつであろう。他の乗り物ファンと違いバスならば所有することも運転することも可能だ。航空機や鉄道は趣味で所有するには無理がありすぎるからだ。
それでもバスを所有するには車庫証明の問題や運転免許(一般的には最低限、大型一種免許が必要)の問題等さまざまな障害はあるものの一応可能で、実際に中古バスを購入して維持しているファンも存在する。
ところで海外でも中古バス市場は存在し、メーカー認定中古車市場なるものがある。そんな中古バスの1台を紹介しよう。
文:古川智規(バスマガジン編集部)
【画像ギャラリー】後輪2軸のスーパーハイデッカーが370万円!
スカニア認定中古車が存在する!
日本でも数こそは多くないものの路線バスを中心に導入実績があるスウェーデンのスカニアだが、欧州全体で売りに出されている認定中古車制度がある。ほとんどがトラックだが、バスもあり記事執筆日現在で価格がASK(応相談)ではなく、最も安い1台を選んだ。
もちろんこれを輸入してどうこう言う話ではない。左ハンドルで右側にドアがあるので日本では乗降しにくいし、自家用車にしても車検が通るかもわからないし、輸送費や関税の方が高くつくかもしれないので、まったく現実的ではないのだ。それを踏まえたうえで、激安スーパーハイデッカーをご覧いただきたい。
スーパーハイデッカーが370万円!
売りに出されているバスの中で最も安かったのがスペインからのスカニアScania Centuri IIIの2007年式だ。価格は車両本体価格で28000ユーロ。日本円で370万円あまりだ。製造日が2007年3月26日で、初度登録が製造翌年の2008年03月27日なので13年落ちということになる。
後輪が2軸のスーパーハイデッカーで客席は63席。日本ではフルサイズか少し超えるくらいのデカさだろう。
ドアは2枚。トップドアのほかに中間に非常口ドアがある。海外のバスは非常口に階段があり通常のドアと同様に乗降可能だが、階段が急になるので乗降はしにくい。しかし、この扉を通常使用できるのもメリットで、旅客が多い時には両方の扉を使用する姿を海外ではよく目にする。
後姿はさすがスーパーハイデッカーといういで立ちだ。後ろを乗用車で走っていると立ちはだかる壁が重厚感と威圧感を与える。
客室は2+2の4列で補助席はない。右側5列目ほどの後ろにある空間が中扉用の階段がある位置だ。通路から右側に直線の階段を設置してるのでかなりの急階段であることは察しがつくだろう。
およそ540000km走っているバスだが、日本で同距離を走っている日本製大型ダンプカーの中古価格が700万円程度なのでかなりお安い買い物であることがわかる。このものすごい距離に見える54万キロは大型車の世界ではそうでもない。
たとえば日本最長距離路線バスである西日本鉄道の「はかた号」の往復距離が約2200㎞なので、毎日運行して約250日分でしかない。バスがたったの8か月でヘタることはないのだ。
エンジンはDT12、420馬力で、約12000ccディーゼルだ。このエンジンは日本でも日野スカニアのブランドで当時のトラクター(トレーラーヘッド)に日本仕様として搭載されていた。
いくら安くても実際に購入して日本で走らせるのは無理がある。しかしバスファンにとっては夢のある価格で、考えるだけでも楽しそうな欧州のバス中古車市場だ。将来欧州に移住をお考えの方は1台いかがだろうか。