1950年製なのにオートマ!! ロンドンバスの正体を暴く

今も使われている?

 当時のロンドン交通経営委員会(LTE)によって、ロンドン市内でのルートマスターの運行が始まったのは1956年で、運営母体が現在のロンドン交通局(TfL)に変わった2005年まで一般路線での営業運転を行っていた。

 老朽化が進んだほかに車掌乗務が原則であることや、バリアフリー対応できない構造であったのが引退の主な理由となっている。

 2005年以降は「ヘリテージルート」と呼ばれる観光色の強い路線で使用されていたものの、ロンドン交通局によるルートマスターの運行は2019年をもって終了している。

 とはいえ完全に道路上から姿を消したわけではなく、ルートマスターの貸出サービスやイベント等での特別運行、民営事業者が取り扱う観光路線などで運転されることがある。

「日本のバス」にもなったルートマスター

 あくまで英国車のルートマスターであるが、日本でもイベントや観光目的の特別な路線バスとして営業運転を何度か実施している。日本でも認知度が高く、右ハンドル車であることが実現に一役買ったようだ。

山口県の下関で保存展示されているルートマスターRM型
山口県の下関で保存展示されているルートマスターRM型

 日本の法律では車両の高さを3.8mまでにする決まりがある。2004年以降に一部道路で高さ制限が4.1mまで引き上げられたが、ルートマスターは4.38mあり、それでも制限に引っかかってしまう。

 そのため、車体の屋根が構造物に激突する心配のない、上方のスペースが十分確保された経路に限定し、特別な認可を受けた上で公道でのルートマスター走行を認めるという、かなり珍しい措置が取られている。

ルートマスターの名を継いだ二階建てバス

 ロンドン市内のバスは全部ルートマスターなのかと言えばそうではなく、普通の平屋建て車両やルートマスターではない二階建て車両(ダブルデッカー)も数多く使われている。

 2011〜17年にかけて、ルートマスターの名を継いだ新しい二階建てバスが製造された。北アイルランドのライトバス社が製造を担当した「ニュールートマスター」NRM型である。

ロンドン市内で運行されているニュールートマスター
ロンドン市内で運行されているニュールートマスター

 2008年、NRMの導入を公約に掲げていたボリス・ジョンソン氏がロンドン市長に当選し、その後導入が現実になったことから「ボリスマスター」なるアダ名も付けられている。車両価格は1台あたり5,700万円くらい。

 長さ11.23m、幅2.52m、高さ4.39m、重さ12.65トン。1階22席+2階40席+立席を合わせ定員80〜87名と、旧ルートマスターよりも大型化された。ワンマン運転に対応できるようドアは前・中・後の3箇所に設けられている。

 環境への配慮も重視されており、ディーゼルエンジンで発電し電動モーターの力で走行するハイブリッド方式を採っているのが特徴の一つだ。

 2022年3月現在、ロンドン交通局では8,795台のバスを保有しており、うち2,467台が平屋建て・6,328台が二階建てだ。その二階建て車のうち1,000台がニュールートマスターにあたる。

 また、NRM型と顔立ちがよく似た、ディーゼルエンジンと電動モーターの力を折半して走行するタイプのハイブリッド機関を搭載した二階建てバスのSRM型(Son of Routemaster:ルートマスターの息子)という車両も9台ほど活躍している。

「RM」が付くということで、SRM型もルートマスターの一種と言える
「RM」が付くということで、SRM型もルートマスターの一種と言える

 既に一般営業路線から退いて年月が経っているが、赤い車体の二階建て“ロンドンバス”=ルートマスターが放つ、路線バスの象徴としての輝きは今も失われていない。

【画像ギャラリー】二階建て車両のシンボル!! ロンドンバス(4枚)画像ギャラリー

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