1日1往復などといった、運行本数が極端に少ない限界系の路線バスが全国に存在している。そんなバスたちは、一体どんな目的での利用を想定しているのだろうか。本数ごとに考察してみよう。
文・写真:中山修一
■普通に使える「ローカル路線バス」の範疇? 5〜4本の路線
まず1日あたり5〜4本の便が設定されている路線だ。「これだと簡単には乗れんよ」と、ほんのり限界が見えるのは確かである。
ただし、足代わりとして何とか利用できるくらいの余裕は残っている。のんびりしたローカル路線バスの面持ちだろうか。
1日に5〜4本程度しかないのは、利用者となり得る分母の数が圧倒的に少ないためであるが、そんな中でも特に優先される利用目的が通勤・通学・通院だ。そういった路線では朝夕晩に発着する便がほぼ確実に設定されている。
バスが発着する時間帯の配分は路線によって様々で、1日5本なら朝2本・昼1本・夕と晩1本ずつであったり、朝〜夕まで2時間おきに出ているコンスタントなダイヤ設定だったりとバリエーション豊富だ。
バスの走行する沿線が観光地の場合、周辺宿のチェックイン/チェックアウト時間に合わせるなど、旅行・観光に使いやすい時間帯に便を割り当てた例も見られる。
■一気に上がる利用難易度!? 3〜2本の路線
1日3〜2本にまで絞られると、不特定多数の人がいつでも気軽に利用できる性質は極薄化する。さらに、上り便/下り便それぞれ朝2本のみ/夕方2本のみ、のように時間帯が偏るパターンが加わる。
3〜2本クラスの路線がどこへ向かうのかを見ると、やはり学校や病院が経由地や終点になっている傾向が強い。
通学・通院にちょうどいい時間帯に必ず便があるのは5〜4本クラスと同様であるが、通勤利用での優先度は多少低くなるようだ。
1日3本の路線で昼間に1本割り当てているケースでは、旅行者向けの移動手段を確保するために設定している場合もあるが、学校などが普段よりも早く終わる日に対応している目的も考えられる。
■絶対に乗り逃せない……1本の路線
とりわけ何のために便が設けてあるのか不思議に感じるのが、上り1本・下り1本ずつしかない路線だ。まさに限界を感じるが、これが全国に結構ある。
1本系の路線で代表的な確たる目的といえば病院になるかもしれない。全部に当てはまるわけではないものの、病院が開く時間に向かえて、診察を終える頃に帰りの便が出るような時刻設定になっていれば、実質通院専用路線だと考えて良さそうだ。
しかし、路線図を見てもこれといったランドマークが見当たらず、発着時刻もまた昼間であったり夜間であったりと、目的が読めない1本系も多々ある。しかも1日1本ではなく、1週間に1本というキワモノまで存在するほど。
そのような場合は十中八九、利用者の数や有無に関係なく、とにかく一般営業のバスを形だけでも走らせている路線「免許維持路線」にあたる。
利用者が減り続けた結果1本だけ残った、というのが免許維持路線に良くある流れと言える。ただし、それなりに本数があったのにダイヤ改正したら突然1日1本になっていた例もなくはない。
そこまで利用者がいなければ廃止してしまえば良さそうなものだが、営業路線を一旦廃止してしまうと、もしその後需要が見込めるようになり再認可を得ようとしても簡単に許可が下りないのだ。
現状で利用が見込めなくても、廃止するまでは行かない状況下の路線に対して事業者が行う措置の一つが免許維持路線化というわけだ。ちなみに1本以上運行していれば、免許維持路線に本数の上限はないようだ。
限界系の路線バスは田舎に限らず、大都会でもドル箱路線に混じってひっそり走っていたりする。出発時刻を確認した上で狙って利用してみれば、普段味わえない刺激的な乗りバス体験ができるかも。
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