大・中・小に分かれる路線バス……この「小型バス」の定義ってマジ?

大・中・小に分かれる路線バス……この「小型バス」の定義ってマジ?

 見た目からでも法律面からでも、路線バス車両はサイズによってジャンル分けができる。中でも小さいのが、その名の通り小型バスであるが、小型バスというジャンルはいつ頃から始まって、どんな性質を持っているのだろうか。

文・写真(特記以外):中山修一

■大昔のバスはみんな小型だった?

背丈は大して変わらないにせよ、大型バスが隣に並ぶと小型バスのミニ感がよく分かる
背丈は大して変わらないにせよ、大型バスが隣に並ぶと小型バスのミニ感がよく分かる

 小型バスはいつ頃できたジャンルなのか……バスの歴史を遡り、1930年代に作られた初期のバス車両から見ていこう。当時使われていたバス車両では、全長5〜7m台・20〜25人乗りが主流だったようだ。

 長さ・乗れる人数ともに現行の小型バスの基準に大体収まる。となれば小型バスの誕生は昭和初期かと言えば、実はそうでもない。

 当時は技術的にサイズの大きいバス車両が作れず、20〜25人乗りが標準サイズだったため、今日の小型バスとはニュアンスがちょっと異なる。

■必要から生まれた遅咲きのジャンル

 小型バスの登場が自ずと1945年以降であるのはイメージ可能ながら、バスの大型化が始まった1960年代に入っても、小型バスと呼べる車両は存在しなかったようだ。

 もっとも、サイズの小さいバスは各種製造販売されていた。ただしそれらは現在で言うところのマイクロバスの部類に入り、こちらも今の小型バスの方向性からは外れる。

 ここで言う小型バスとは、20〜25人乗りのマイクロバスと、最大定員60人程度の中型路線バスの間に位置するタイプの車両だ。「小型」と名は付いていても、バスとしてなら比較的小さいという意味で、運転するには大型免許が要る。

 その昔は、閑散路線ならマイクロバス、それ以外は普通のバス車両を使えば事足りていたと思われるが、時代の流れによってバスを取り巻く環境が変わり、大型や中型バスほどの輸送力は必要ないが、マイクロバスだと心許ない路線が出始めた。

 そんな狭い範囲のニーズに応えるべく、必要にして十分な定員に加え、ローカル路線に付き物の狭い道も通れる手頃な車幅と小回りの効き、大型・中型路線バスと同じ感覚で乗り降りができる設備を持った「小型バス」が登場したのは1980年代だ。

■オモチャみたいな本物のバス

 各メーカーから発売された路線バス向けの小型バスの多くが、車体の長さ7m、幅2.3m、最大50人程度まで乗れるスペックで、ちょうどマイクロバスと中型路線バスを補完するような仕様になっていた。

 1980年代から花開いた小型バスの車体デザイン自体は、中型路線バスを踏襲している。そのため箱型で背が高い割に「うわ短っ!」と声に出してしまいそうなほど、物凄く寸詰まりに見えるデフォルメスタイルが大きな特徴だ。

1997年式の日産ディーゼル製小型バス(写真:バスマガジン編集部)
1997年式の日産ディーゼル製小型バス(写真:バスマガジン編集部)

 以降このタイプの小型バスが順次リリースされていった。1996年に登場した日産ディーゼルの7m車、スペースランナーRNの京王バスに導入されたものに至っては、寸詰まり具合がそっくりだったことから「チョロQ」という愛称が付いていた。

 路線バスにバリアフリーが重視され始めた年代に入ると低床仕様への対応が行われたが、排ガス規制や一部メーカーのバス事業撤退など様々な事情が絡み、2000年代後半を境に7m車は作られなくなった。

次ページは : ■小型バスのフォーマットを固めた一台

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