自動車を走らせる際に最も目にする計器の一つが速度計だ。日本製の乗用車なら180km/hまでの表示が一般的であるが、バス車両ではどうなっているのだろう。
文・写真(特記以外):中山修一
■大昔のクルマだと何キロ?
自動車に速度計(スピードメーター)を取り付ける発想と、計器の発明自体は自動車の黎明期に遡る。今となっては考えらえないが、ごく初期のうちはオプション扱いで、非常に読み取りづらい代物だったと言われる。
次第に自動車が普及しはじめ、1920年代に入る頃には速度計も合わせて浸透していったようだ。
当時爆発的にヒットしていたT型フォードでは、最高時速50マイル(80km)、60マイル(96km)、75マイル(120km)まで表示された、少なくとも3種類の速度計が用意されていた。
メーターの部分アップのような写真等が皆無のため、日本のバス車両に取り付けられていた、当時の速度計についての詳細はほとんど分からない。代わりに近年レストアされた戦前のバス車両を見ると、1929年製のスミダM型には、50km/hまでの速度計が取り付けられている。
■年代と共に変わる速度計の上限値
続いて、戦後のバス車両の速度計に注目してみよう。例えば、東京都内の博物館に展示されている、1951年に製造された日産のキャブオーバー式バスの、ダッシュボードに埋め込まれている速度計は100km/hまで切ってある。
あくまで数値の上でなら、戦後すぐの段階から3桁台の上限は普通にあったと想像できる。日産のキャブオーバーバスから14年ほど経ってから製造された、大型路線車の日野RB10ではどう変わっただろうか。
日野RB10の保存車の場合120km/hまで記されている。一方で、RB10よりも7年後の1972年に作られた路線車の日野RE120には、90km/hまでの速度計が取り付けられている。
上記の車種以外に、ボンネットバスやリアエンジン式のディーゼル車を含め、1960年代〜2000年代の様々な大型バス車両のメーター回りを見比べていくと、90km/hか120km/hのいずれかが多い印象だ。
現行の路線バス車両になると、日野ポンチョが140km/h、三菱ふそうエアロスター140km/h、いすゞエルガ160km/hなど、さらに最大値がアップして、軽自動車並みかそれ以上の速度が記されるようになってきている。
ちなみに連接バスのいすゞエルガデュオは140km/h、燃料電池車のトヨタSORAも140km/h。よりハイパワーな大型高速・貸切車の速度計はもっと上限が高いかと思いきや、大抵の車種は140km/hまでで、数値的には路線車と変わらない。
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